2004年04月16日発行835号

【自衛隊と全占領軍の撤退こそ 3人とイラク民衆を救う道】

 日本政府の自衛隊撤退拒否により、生命の危機にさらされた3人の日本人拘束者。その3人の「解放声明」をもたらしたのは、自衛隊撤退を求める市民・家族の声だった。4月13日現在、まだ解放には至っていないが、イラクから自衛隊と全占領軍を撤退させる運動を強めることこそ、3人を救い、イラク民衆のこれ以上の殺りくを許さぬ道だ。


怒りは一つ首相官邸に

「今すぐ自衛隊を撤退させろ」と首相官邸に叫ぶ参加者(4月11日)
写真:こぶしを突き上げる人々

 「イラクで3人の日本人拘束」のニュース直後から、国会・首相官邸周辺には、日本政府の派兵責任を追及し、撤退を求める市民が続々集まった。10日は600人、11日は2千人、そして「解放声明」が報道された12日には2千500人と、その数は日増しにふくらんだ。

 「時間がない、直ちに撤退を」のプラカード。「自衛隊は撤退しろ」のシュプレヒコール―参加者は終日、国会・首相官邸周辺で自衛隊撤退を要求した。

 10日、正午。集会が開かれた衆院議員面会所に入りきれない人が歩道にあふれた。集会の様子はマイクで外の参加者にも伝えられる。

「見殺しするな」と各地から

 「よりによって、イラク派兵に反対していた人が拘束されるとは。小泉の責任だ」「いても立ってもおられず、やってきた。何かしたい」と訴える北海道や広島から上京した若者。いち早く自衛隊撤退拒否を宣言し米軍に協力を要請する一方で、家族の面会要求には背を向ける小泉に怒りの発言が相次ぐ。「これじゃあ見殺しだ。命より日米同盟が大切なのか」「米特殊部隊が突入したら皆殺しにされる」

衆院議員面会所を埋め尽くした参加者(4月11日)
写真:「自衛隊は今すぐ撤退」と書いた紙を持って座る参加者

 長野から上京した元薬害エイズ訴訟原告・川田龍平さんは「人の命や人権よりお金が大切だとするこの国を変えたいという思いでたくさんの人が集まっている。政府は3人の命を救えず、人道支援など言う資格はない」と訴えた。

 「あきらめずにあらゆることをやろう」―家族の訴えを載せたビデオのアルジャジーラへの持ち込み、イラク内の宗教団体への働きかけ、1月世界フォーラム参加団体への協力要請、救助と自衛隊撤退を求める小泉宛署名の10万筆獲得などが報告された。

 11日、正午。前日に倍する人々が集まった。「人質の24時間内解放」のニュースに安堵感は見られる。しかし、WPN(ワールド・ピース・ナウ)実行委員会の高田健さんから「今朝のテレビで、政府は『解放となったのは、撤退しないと毅然とした態度をとったこと、米軍が犯人を包囲して圧力をかけたためだ』と述べている」と報告されると、「エーッ」とどよめきが起こった。「政府は拘束したグループを刺激して解放を妨害する気か」「せっかく解放を声明しているのに米特殊部隊を突入させるつもりか」怒りの声が上がる。

家族もともに自衛隊撤退

「何とかしなければ」と国会前にかけつけた若者たち(4月9日)
写真:「小泉首相、あなたが3人の身代わりにイラクへ行って」と書いた横断幕を手に抗議する若者たち

 家族が到着すると大きな拍手に包まれた。「解放に向け世界中の方々が動いてくれた。これで人の命が救えるなら、ほんとうにすごい力だと確信できます」(今井さんの母)「みなさん一人一人が貴重な時間をさき活動してくれたことが、イラク現地にも伝わっていると思う。今まで泣かないようにしてきたが、こんなに多くの方がいてくれうれしい」(高遠さんの弟)「家族だけではだめだが、みなさんがこんなに集まってくれた。犯人グループは『国民が自衛隊撤退を取り組むよう』要求しているが、みなさんの力をお借りしたい」(郡山さんの弟)全員が涙の訴えとなった。

 家族のあいさつを受け、高田さんは「イラクでは今でも多くの人が殺りくされている。3人の問題があろうがなかろうが、撤退させることは日本の市民の責任だ」と呼びかけた。

自衛隊と全占領軍撤退を求めるデモ(4月11日・大阪)
写真:大きな「撤退」の二文字の切抜きを掲げるなど、イラク占領停止を求め行進する人々

 政府の横やりが入らないよう監視し、イラクの人々に闘いのメッセージを送り続けようと、首相官邸周辺では夜遅くまで千人を超える市民が「自衛隊撤退」を連呼。家族8人もあいさつにかけつけた。

 解放が確認されない中で、行動は12日も13日も続いた。12日夜には、3人の安否を心配して1100人が集まった。学校で撤退のビラまきをした中学生たちも参加した。

 この日小泉は、来日中のチェイニー米副大統領に改めて撤退させないないことを表明し「支援」を要請。「ファルージャで大虐殺を行なった米軍に頼ろうだなんて危険極まりない。占領を直ちに止めろ。自衛隊・全占領軍の撤退」―参加者の怒りは一つになって首相官邸に向けられた。 

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