2004年07月02日発行844号

【人らしく生きよう−国労冬物語 / フランスで上映会 / 佐久間忠夫さん パリの印象を語る / 観客総立ち 拍手また拍手】

セーヌ川をバックに立つ佐久間忠夫さん(左)と山田則雄さん(写真提供・国鉄闘争共闘会議 / 下も)
写真:セーヌ川河畔に立つ二人

 映画『人らしく生きよう─国労冬物語』が初めてフランス・パリで上映された。6月4日から、制作者のビデオプレス・松原明さんと佐々木有美さん、出演者の佐久間忠夫さん、山田則雄さん、大谷英貴さんと友枝さん夫妻の6人が訪仏し、映画を通して国際連帯を実現した。その一人であり、本紙6面コラム「生きる」でおなじみの佐久間さんに話を聞いた(まとめは編集部)。


上映後の熱い討論

◆上映会の反響はどうでしたか。

 本当にすごかった。いい経験をさせてもらった。

 フランス語版制作にあたった久保田ゆりさんはじめパリ上映実行委員会の人たちやSUD(連帯・統一・民主主義労組)鉄道労組のみなさんに大変お世話になった。

6月4日に開かれたSUD国鉄労働会館での上映会には、組合員とともにATTAC(市民を支援するために金融取引への課税を求めるアソシエーション)フランスに参加している女性や若い人など約150人が集まった。

上映終了後、鳴りやまぬ拍手
写真:立ち上がって拍手を送る観客

 フランスの人たちは違うね。上映中も笑ったり、互いに言い合ったり歓声も上がる。一番びっくりしたのは、終わって出演者4人が前に出ると、みんな立ち上がって大拍手。1分以上も止まらない。どう振る舞っていいか分からず、大きく手を振って応えたよ。

出演者の発言が終わると、みんな「ハイ、ハイ」って手を上げて質疑応答が始まった。上映は午後9時すぎに終わったが、11時ごろまで討論が続いた。途中で休憩を入れたけど、みんな戻って来る。日本じゃ考えられないね。

 佐々木さんが報告をまとめているけど、「人間らしく生きることと闘いとの関係に感動した」「感動的だ。15年間も自分たちの方針を貫いたのはすごい」などの感想がいっぱいだった。パリ在住の日本人男性は「これだけはっきり怒りを表明した日本人の映像は今までなかった。民営化が始まろうとしているフランスの今後を予見している」と言っていた。

 6日の上映会は三つ四つ併設された映画館の一つで、収容人員が百人くらいの会館。何人くらい入るのか心配したけど、ほぼ満席になった。

 終わると、ここでも立ち上がって拍手、拍手。午後9時から次の映画が始まるので、終わりの時間を気にしていたが、質疑討論が続く。「日本には労働法はあるのか」とか「国労からずっとやられっぱなしなのに、なぜ自分たちで別の組合を作って闘わないのか」など。端的に言って、国労なんか抜けて自分たちですっきりとした方がいいという意見が多かった。

にぎやかなデモ

 討論が終わると受付は黒山の人だかり。持参していったマフラーや連帯バッジ、田中哲朗さんのカセットも全部売り切れた。中曽根の証人喚問を求める署名にも多くの人が署名してくれた。

 映画館の支配人が「ご苦労さん、おめでとう」とシャンパンを差し入れてくれ、みんなで一口ずつ飲んで乾杯した。

◆年金改悪反対とブッシュ訪仏反対のデモにも参加したそうですが。

 5日、集合場所の公園に行くと、老若男女、女性の方が多いように思ったけど、人がいっぱいだった。向こうじゃ集会をやらない。各グループや組合がそれぞれ勝手にワッペンつけたり、歌ったり踊ったりしている。俺らがゼッケンをつけ、国鉄闘争共闘会議のノボリ旗を持っていると、「これは何て書いてあるんだ」と話しかけてくる。

 デモが動き出すのに2時間くらいはかかった。日本じゃフランスデモといって、道路いっぱいに手をつないで行進したけど、向こうじゃ道路そのものが解放されている。自動車なんか通らない。手をつながなくても自然に道路いっぱいになって行進する。宣伝カーのマイクでシュプレヒコールし、歌ったり踊ったりして、とにかくにぎやかだ。

 沿道の人々も一緒になって拍手したりして参加している。楽しんでいる感じだな。フィリピン・トヨタで争議をしている人たちもジュネーブの帰りに寄って一緒にデモ行進をした。

 日本みたいにデモの規制はなかったね。デモが終わると、清掃車が来て、ゴミやチラシを集めて水を撒き、市民のために道路をきれいにしていた。

俺みたいなのが多い

◆パリの街はどうでしたか。

 SUD国鉄労働会館の玄関の壁に名前を刻んだプレートがあった。二度の世界大戦のレジスタンスで亡くなった鉄道労働者の名前だそうだ。パリ東駅の事務所の脇にもあった。それを見て、日本にはレジスタンスみたいな運動がなかったが、こんなことが戦争後の歴史の違いになっているのかなと感じたね。

 SUD郵政労組役員のエルワン・ケレンさんのお宅に4日間、山田と一緒にお世話になった。モンマルトルの丘に行ったのは深夜12時くらいだったが、若い人たちがいっぱいで、芸術の街の一端を見たような気がする。街には黒人も多く、日本人を見ても珍しくないみたい。喫茶店でも気楽に話しかけてきたね。

 市場近くの路上で音楽グループ「ジョリ・モーム」の路上コンサートを見に行った。女性5人、男性4人のグループがパフォーマンスをやっていた。「月桃の花」歌舞団のようなものだ。歌ったり踊ったり、コントをやったりしていると、すぐに大勢の人が集まってくる。小さな子どもたちが周りにいて、まねて踊っている。小さい時から表現することを体で感じているのはすばらしいなあと思ったね。

 その場で俺らの闘いも紹介されて、最後にインターナショナルの合唱。「日本語で大きな声で歌って」って言われ、大声で歌ったよ。終わると、カンパ箱が置いてあり、カンパを入れる。

 一番感じたのは、フランスの人たちは自分の意見を言う。言いたいことを言い、やりたいことをやるという意識が徹底しているように思う。日本みたいに周りを気にして、右見たり左見たりしない。自分、人間そのものを大事にしている。だから、黙っていない。要するに、俺みたいなのが多いんだ。だから、海外にいるって感じがあまりしなくて、気楽に行けたね。

◆ありがとうございました。

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