2004年07月30日発行848号 ロゴ:なんでも診察室

【栄養不良】

 6月25日から5名の仲間とともに、フィリピンに行ってきました。医療問題研究会では毎年、就学前のスラムの子どもたちに教育と食事を保障しているAKCDF(アバカダ・カユマンギ地域発展基金)の入学時健診をしています。猛烈な雨にもかかわらず130人が受診しました。

 昨年から「保健センター」の職員が健診を手伝ってくれています。彼らの主な仕事はスラムの約300人の栄養不良児に対する政府の支援政策を実行すること。しかし、1人の栄養不良の子どもへの食費支援は、たった3か月で打ち切りだそうです。

 それに対して、AKCDFでは50人ほどの子どもに1年間の食事を提供しています。年に1度ですが、私たちの健診を多数が受診しますから、AKCDFが地域で信頼され、入園者と収入を増やすための手助けとなり、ひいては栄養不良の子どもたちの食事供給にもつながっているのかなと思っています。

 フィリピン経済は日本をはじめとするグローバル資本の餌食となり年々悪化しています。通貨のペソはここ数年で円に対し半減しています。私たちの旅費は安くなりましたが、逆にそれがフィリピンの失業者を増加させ、栄養不良児増加の基本的原因となっているのです。

 栄養不良といえば、イラクから名古屋大学に研修に来ているアサド医師によると、1991年以後、経済制裁でイラク・バスラの子どもの4分の1が栄養不良になったそうです。その上、今回の米英軍などの占領で、事態は大幅に悪化しています。イラクの石油を狙ったグローバル資本の政策の最大の犠牲者が子どもであり、栄養不良です。医療支援もさることながら、イラクから占領軍が撤退し、政治・経済的に安定し、栄養補給ができるようになることが子どもたちへの最高の贈り物です。

 実は、ごく少数ですが日本にも栄養不良の子どもがいます。少し前、3か月で体重6・6キログラムから、6か月で5・6キログラムに減っていた子を入院させました。アトピー性皮膚炎のこの子の母が、製薬企業により作り出された薬の乱用から子どもを守ろうとして、逆に漢方に頼ったための犠牲者です。

 一見何の関わりもないようなフィリピン・イラク・日本の栄養不良が、実はグローバル資本の飽くなき利益追求の直接・間接的結果であると思われました。上位200人が世界の所得の41パーセントを所有する(国連報告)という異常な世の中で、世界の仲間とともに平和・平等・科学的医療を求めることが栄養不良と闘う私たちの方向かと思った次第です。

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