ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗 2004年09月08日発行853号

第51回
『クラーク法廷(2)』

 1991年5月11日の公聴会で公表されたクラーク法廷起訴状は、ジョージ・ブッシュ大統領(父親)を筆頭に、ダンフォース・クエール、ジェームズ・ベーカー、リチャード・チェイニー、ウィリアム・ウエブスター、コリン・パウエル、ノーマン・シュワルツコフなどを被告人として、19の罪を掲げている。主なものを紹介しよう。

 告発1:アメリカは、イラクを挑発して、アメリカの対イラク軍事行動および湾岸に対するアメリカの永続的な軍事的支配を正当化する目的で、1989年にあるいはそれ以前に開始された一連の行動をとった。

 イラク地域紛争への介入のためにアメリカがいかに事前準備を整えていたかが明らかにされている。

 告発2:ブッシュ大統領は、1990年8月2日から、イラクを経済的かつ軍事的に破壊するみずからの計画に対するいっさいの干渉を妨げるよう意図し、かつ行動した。

 議会に図ることもせずに、「まったく防衛的なもの」と称して最初は4万の、後には20万以上の軍隊を派遣した。国連安保理事会に圧力をかけ、イラク側の平和的交渉要求を最初から無視し続けた。

 告発3:ブッシュ大統領は、イラク全土にわたって、民間の生活や経済的生産にとって不可欠な施設を破壊することを命令した。

 実際、発電施設や下水施設をはじめとする民生施設破壊によって、病気、飢餓、ストレスで多数の被害が生じた。

 告発4:アメリカは、文民の生命、商業およびビジネス地区、学校、病院、モスク、教会、避難所、居住地区、史跡、民用車両ならびに政府文民機関を意図的に爆撃し破壊した。

 ヨルダン赤新月社によると、戦闘終結1週間前に、文民11万3000人が死亡し、そのうち60%が子どもだった。

 告発5:アメリカは意図的に、イラク全土にわたって無差別爆撃を行った。

 告発6:アメリカは、無防備なイラクの兵員を意図的に爆撃し撃破し、過剰な軍事力を行使し、しばしば武器をもたず、しかも戦闘地域からはるかに離れた場所で降伏しようとした兵士や、バラバラに別れて逃亡している兵士を殺害し、停戦後においても、無差別にかつ気まぐれに、イラク兵を殺害し物資を破壊した。

 「七面鳥射ち」と称する無差別攻撃である。

 告発7:アメリカは、軍事目標と非軍事目標の両方に対し、大量破壊が可能で、無差別殺害と不必要な苦痛を与えるために使用を禁止されている兵器を使用した。

 気化爆弾、ナパーム弾、クラスター爆弾、スーパー爆弾である。後に劣化ウラン弾の使用が重要な問題として明るみに出てくることになる。

 告発8:アメリカは、危険な物質および危険な威力を含むイラク内の施設を意図的に攻撃した。

 核関連施設、化学工場、ダムなどの意図的爆撃である。

 以上のほか、1989年12月のパナマ侵攻の違法性、国連の機能を腐敗させたこと、アメリカ議会の憲法上の権限の簒奪、環境破壊、膨大な難民や飢餓の発生、医薬品や食料の剥奪、停戦後も続く占領、軍事的支配の維持のための人権侵害容認、戦争遂行のためのメディア操作などが指摘されている。

 訴因としては、平和に対する罪、戦争犯罪、人道に対する罪、国連憲章違反、国際法違反、アメリカ憲法違反などが掲げられている。

 2003年3月以後にブッシュ(息子)のアメリカがやったことと同じことを1991年のブッシュのアメリカが行なっていたことを確認できる。

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