2004年09月08日発行853号
ロゴ:反占領、自由・平等をめざして

【第1回 「政権移譲」後に残虐さを増す占領軍 / 「あらゆる対市民テロをやめろ」】

 「政権移譲」から2か月。イラクは依然として占領下にある。むしろ占領軍は、暫定政府を盾に一層残忍さを増した。8月15日から23日まで、バグダッドなどを訪れた。そこには、わが物顔で走り回る占領軍の装甲車がいた。そんな中で占領軍撤退、自由・平等の実現をめざして奮闘する多くの人びとに出会った。”民主イラク”を築く闘いの息吹に触れた。(豊田 護)


「民主イラク」への息吹き

水平に銃身をかまえて威かくするイラク軍(バグダッド市内)
写真:攻撃態勢の軍用車輌が何台も続いている

巻き添えの危険

 「安全上から、バグダッドに戻ることにした。申し訳ない」

 イラク失業労働者組合(UUI)のアムジャッドが、車を止めて言った。イラク労働者評議会労働組合協議会(FWCUI)やUUIのメンバーとともに2台の車に分乗してバグダッドの北約100キロにある都市・シャフラバンへ向かう予定だった。FWCUIの拠点組合がある繊維工場を訪問するためだった。

 経路の途中にあるバクーバの街で米軍の空爆があり、武装勢力が米兵を待ち伏せ攻撃したとの情報がアムジャッドの携帯電話に入った。これまでバクーバは、反米抵抗闘争拠点の一つとして、度々爆撃にあってきた。銃撃戦も起こっている。

 2台の車はバグダッドに向け反転した。直後、イラク国軍の武装車がバクーバ方面に走り去り、続いて、米軍車両と行き違った。巻き添えの危険を実感した。

深刻化する治安悪化

 7か月ぶりにバグダッドの街を見た。前回、どこかおどおどしていた占領軍は”自信”を取り戻したかのようだ。攻撃を恐れ猛スピードで装甲車を走らせていた米軍は、今回、歩行パトロールさえ行っている。交通を遮断するための装甲車は単独で待機していた。

 6月末米国の指名でつくられた暫定政府は、米軍の「対テロ」爆撃を支持・承認した。”イラク人政府”からお墨付きを得た占領軍は、これまで以上に堂々と虐殺をくりかえしている。シーア派の聖地といわれる南部の都市ナジャフで、バグダッドのサウラ地区(サドル・シティー)で、ファルージャ虐殺が再現されている。

 「占領軍は一層暴力的、卑劣になってきている」と占領監視センターの前代表のエマン・ハマスは言った。「サダムが10年かけて殺した人の数を占領軍は1年で殺した」と憤る人もいた。

 イラクの人びとに「一番困っていることは」と聞けば、「治安の悪化」を口にする。

 占領軍による爆撃・襲撃の脅威は日常的にある。拘束者への拷問・虐待は続いている。社会秩序を破壊した占領軍は誘拐・レイプなどの犯罪を促してさえいる。暫定政府に参加する諸政党は自らの権益確保に狂奔し、汚職にまみれている。犯罪の取り締まりなどできるはずがないし、する気もない。

 その上、占領軍に対する絶望的な怒りを背景にした自爆攻撃などの巻き添えにより、市民が犠牲となることも少なくはない。

 こんな日常を何とかしたいと人びとは切実に願っている。

「ここにイラクの良心がある」とUUIの活動に共感する中高生姉妹(8月19日・バグダッド)
写真:UUIのポスターやタペストリーの前で語る姉妹

大会に35以上の団体が

 8月25日、バグダッド市内で「市民生活とイラク社会の再構築をめざす大会」が開催された。”あらゆる種類のテロをなくそう”(詳細別掲)との呼びかけに35以上の政党・労働組合、人権団体などが応え、150人以上が集まった。

 イラク労働者共産党(WCPI)やUUI、女性自由協会(OWFI)などが2か月をかけ、数百と存在する政党・団体を一つずつまわった。国民連合、教員組合、イラク作家・文化人同盟、地球の友・学生青年連合などイラク社会に影響力を持つ団体・個人の賛同が得られた。統治評議会に参加していたイラク国民会議(INC)さえも名を連ねている。

 ”いかなる理由があろうとも市民を犠牲にするな””すべての都市から武器を撤去せよ”―国家テロである占領軍も、市民を巻き添えにする無差別武力レジスタンスも、ともに武器を捨てよという要求は民衆の支持を得、拡大していくことは間違いない。自由と平等に貫かれた社会、基本的人権が守られた社会の実現をめざすスローガンは民衆の願いである。

 反占領闘争は攻勢に転じた。大衆的な闘いの前進が、武器を捨てさせ、占領軍が居すわる口実を切り崩していく。居住地域で、工場で、”民主イラク”に向けた実践が積み重ねられていた。    (続く)

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