2004年10月27日発行860号

【イラク市民レジスタンス戦線議長 サミール・アディルさんに聞く 市民レジスタンスこそ占領終わらせる】

 占領支配の破綻がますます明らかになっているイラク。現地の状況と占領軍撤退の運動について、イラク市民レジスタンス戦線のサミール・アディル議長に聞いた(編集部の責任でまとめました)。

サミール・アディル議長
写真:サミール・アディル議長

アメリカこそテロ国家

◆現在のイラクは

 ブッシュの戦争終結宣言以降も、米軍とイスラム政治勢力の戦闘が続いています。

 一番重要なのは、イラク社会に治安が全然ないことです。爆発、銃撃は普通の市民が暮らすところで起こり、死んでいくのは市民なのです。電気は最長で一日6時間しか通じないし、水道に下水の水を混ぜて飲むという有様です。医療機関は品質期限切れの薬を出さざるをえず、水も電気もないので手術もできません。国連の統計では失業者は1千万人にのぼり、売春は社会的な現象になっています。

 米軍は非常に疑い深く、人を片っぱしから逮捕し拷問しています。子どもたちを殺し、疑わしいと思った家を勝手に爆破します。

 ファルージャからは何度も「助けに来てくれ」と電話がかかってきました。爆撃ばかりではなく、誰ひとり逃げられないのです。正直に言うとサダム派の人が多いのですが、それは理由にはなりません。子どもたちはサダムが誰かも知らないままに殺されているし、サダムが好きな女性は家事をしているだけで殺される。

 米軍はアルジャジーラなどの放送を禁じました。そんな権利をイラク人は彼らに与えた覚えはないし、そもそも政治の自由という原則に反しています。アメリカは民主主義を中東にもたらすという触れ込みでやってきましたが、これは一体何でしょうか。

 誰でも捕まえ、拷問し、気に入らない町を襲い、封鎖し、破壊する。そういう行動を「テロとの闘い」と言っていますが、これこそテロリストの行為であり、アメリカこそナンバーワンのテロ国家です。

◆武装勢力をどう考えますか

 イスラム政治勢力は、「攻撃は武装した抵抗であり、占領軍を追い出すためだ」と正当化しています。

 自殺爆弾や一般の住宅地を巻き込んで戦闘するのはアメリカと全く同じ方法です。また、イスラムの教えに反すると言って、美容院に爆弾を投げ込み逃げ出してきた女性を捕まえて髪を切り、酒やCDの店を爆破しています。

 私は彼らとの討論番組に出たことがあります。犯罪行為を指摘すると、彼らは「アメリカの占領とかの大きな話をしよう」と言う。私は言いました。「アメリカが一番悪いのは当然だが、どんな組織であろうと、どんな状況になろうと、イラクで人権を侵害する権利はない。あなた方の犯罪行為は受け入れられない」。彼らは「オーケー、占領に反対するならこれからは協力しよう」と言いましたが、武装抵抗でやるならば応じられないと断りました。

 この論争は成功で、番組は11回も再放送されました。

非武装抵抗はつぶせない

◆占領を終結させる展望は

 戦後6か月くらいまでは、市民と米兵は友好的なムードでしたが、今では誰もが占領に失望しています。米兵は毎日攻撃され、士気は急降下しています。彼らは、武装勢力にはテロリストだと言って犯罪行為を正当化できるかもしれませんが、非武装の闘いには正当化も殺すこともできず、ジレンマに陥っています。

 私たちの経験を話しましょう。48時間の座り込みをすると、リーダー10人が捕まりました。国際的に大きなキャンペーンを展開すると、2日目には釈放しました。次は50人が捕まりました。またキャンペーンを展開すると全員釈放しました。いくら人を捕まえてもだめだと気がつき、事務所に来てリーダー2人を捕まえ15年の刑にすると脅しました。米軍のところへ行き「24時間以内に釈放しないとまた大きな国際的キャンペーンをやるぞ、テロリストを逃がし町の人が殺されても知らん顔をしているのか」と抗議をするとまた釈放しました。

 来日2日前に米兵が事務所に来て日本から贈られた「占領を止めろ」の横断幕を見て、日本に知り合いがいるのかと驚き、取り込むために金を寄付しようと言いましたが、断ると混乱して腹立ち紛れに機器類を壊していきました。

 私たちは4つの自治地区を運営しています。そこでは人々が自主的に組織します。安全を守り、発電機を持ち、ゴミを片付け、きれいな水を手に入れています。NGOからの資金援助を受けて診療所や小学校を作っています。コンクリートブロックの工場を建設して150人の職を作り出したところもあります。

 このような市民レジスタンスをテロリストとして攻撃することはできません。私たちの運動が占領を止めさせるただ一つの道だと思います。

◆8月に開かれたイラク市民社会再構築大会の様子を

 20歳から75歳の、非常に多くの人たちが私たちの仲間になりました。合意したのは、まず第1にアメリカ、イギリス、その他外国の軍隊はイラクから出て行くべきだということです。第2に、政教分離の政府をつくることです。5万人いたキリスト教信者は、ムスリムの攻撃で5千人に減りました。彼らは私たちの連帯自治地区の取り組みに希望を見出し、一緒にやろうと言っています。3番目は人権を守り、社会サービスを提供するということです。いかなる状況においてもどんな政党、組織に対する人権侵害を許さないという原則です。

 イラクの人たちは政教分離の政府を心の底から望んでいるので、私たちの運動に展望を見出した、どっちを向いても暗いシナリオだが明るい光が見えた、と喜んでいます。

 アルジャジーラやBBCなど、20近くのメディアが取材しました。中には、政教分離を擁護する団体の会員になる社もあったくらいです。

占領下の選挙は偽善

◆アラウィ政権は1月に総選挙を行なおうとしていますが

 ブッシュにとってはこの選挙はどうしても必要です。まず、自分の政策が正しかったと証明したい。次に、大量破壊兵器がないことがはっきりしてしまったので、民主主義をイラクにもたらすのが一番大事な理由だったとする必要がある。選挙はそのメッセージを伝えるゲームでしかなく、偽善以外の何者でもない。冗談にしか聞こえませんが、アラウィやラムズフェルドは、選挙は全国でなく一部の地域だけでもいいとまで言っています。

 外国のメディアも、選挙の意味も理解できず、政党の政策も候補者もわからず、残り2か月しかないのに選挙ができるのか、と言っています。

 選挙に行く人などいないでしょう。投票所でもどこでも、爆発が起こり地獄の様相になります。国民会議が開かれた期間も、イラク中が混乱しました。アラウィは治安のために最善を尽くすと言っていますが、誰がそんな言葉を信じるでしょうか。今、最善を尽くしてもあちこちで人が死んでいます。アフガニスタンと比べてみてください。イラクに比べれば、まだ治安はいいのに、2年かかり、3回延期して、まだ混乱しています。

 先日キルクークへ行ったときのことです。検問所で国家警備隊に止められてIDカードを出すと、私を雇ってくれと言うのです。「仕事はあるでしょう」と聞くと、「この仕事では、スパイとしてイスラム政治勢力に殺される。でも、あなたたちに協力して殺されても、誰もスパイとは言わないだろう。同じ死ぬならあなた方と死にたい」。自分の国を守るため働いて死にたいというのが普通の人の気持ちです。選挙に行ってアメリカのスパイと見られて殺されるなんて汚名を甘んじて受ける人はいません。

 私たちは選挙を否定しません。正しい選挙でなければならず、そのためにきちんとした環境が必要なのです。少なくとも6か月くらいの間、どの政党も政策と候補者をみんなに知らせることができる、政府もメディアもそれを伝えるという環境がなければいけません。同時に、すべての人権が必ず守られる保証が不可欠です。

 何より重要なのは、占領下の選挙には何の正統性もないということです。アメリカ、イギリスその他外国の軍隊が全部撤退すること。これはぜひとも必要な条件です。

◆日本の運動へメッセージを

 市民レジスタンス運動とイラク国民を代表して連帯と支援に感謝します。それがなければ私も他のリーダーたちも今頃は刑務所に入れられているでしょう。これは決して冗談ではない、現実のことなのです。私たちはあなた方の支援のおかげで強くなりました。孤立してはいない、どこかで支えられているということです。私たちが協力すればアメリカの世界征服の夢を打ち破ることができると思います。

◆ありがとうございました。

      (10月14日)

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