2004年12月22日発行868号

【イラク国際戦犯民衆法廷 東京公判 派兵延長の小泉首相は有罪 米・英・日・比は侵略の罪】

ファルージャ虐殺について追起訴がおこなわれた
写真:ファルージャ虐殺の映像を映しながら起訴状を読み上げる

 12月11、12の両日、イラク国際戦犯民衆法廷(ICTI)東京公判が開かれ、被告の米大統領ブッシュ、英首相ブレア、小泉、フィリピン大統領アロヨに侵略の罪・戦争犯罪・人道に対する罪で有罪判決が下された。法廷を構成する判事・検事・証言者そして傍聴者が、ファルージャ虐殺に糾弾の声を上げ、全占領軍撤退を求める民衆の闘いをさらに世界に呼びかける場となった。

世界の民衆の力で撤退を

 「駐留するすべての外国軍は即時撤退しなければならない」。韓国・インドネシア・日本の判事団3名が読み上げる判決(主文)と勧告の1項目ごとに、500人(1日目400人)の傍聴者から大きな拍手が起こった。イラク侵略・占領が断罪された瞬間だ。

 公判ではイラクとアメリカ、イギリス、日本から1日目7人、2日目4人の証人が陳述。14回の公聴会を踏まえた市民を含む検事団の論告とアミカスキュリエ(法廷助言者)との論戦を経て、米・英・日・比の国際法違反が裁かれた。

証言者に会場から拍手が送られる
写真:拍手する参加者たち

制裁で100万人死亡

 証言では経済制裁とファルージャ虐殺がジェノサイドであると指摘する証言が相次いだ。元国連事務総長補佐のデニス・ハリデーさんは「湾岸戦争後、13年間の経済制裁で百万人が死亡した。国連が進めたジェノサイドだ」と、国連安保理の制裁がイラクの人々を苦しめ続けてきた事実を示す(要旨別掲)。イラク女性自由協会のハウザン・マフマウドさんも「ファルージャ攻撃はジェノサイドだ」と強調した(要旨3面)。

 バグダッド在住で身内3人を殺されたハルブ・ハミードさんはモスクへの無差別攻撃の体験を生々しく語る(要旨3面)。「1500人が礼拝していたモスクに米・イラク軍兵士350人が侵入し、4人が殺されを無差別に銃撃。多くの人たちが負傷した。占領軍を追放しないかぎり虐殺は続く」。

 12月9日、小泉首相は自衛隊派兵の1年間延長を強行した。

 日本だけでなく海外証言者からも非難の声が上がった。岡本三夫広島修道大教授は「自衛隊派兵は絶対平和主義の憲法9条に反する」。ハルブさんは「サマワを3回訪れたが、自衛隊は歓迎されていない。派兵延長は大きな間違いだ」。デニスさんも「不当な侵略と占領の支援につながる」と抗議した。

市民が作った公聴会

 市民が作り上げてきた14回の公聴会は小泉の戦争犯罪を暴いてきた。その成果が法廷の場で明らかにされた。福岡公聴会を開催した青柳行信さんは「博多港や鹿児島港は民間の港だが、米軍の軍艦が寄港し軍港化している」。千葉の吉沢弘志さんも「自衛隊習志野基地には日本唯一のパラシュート部隊が置かれ、テロを想定した特殊作戦部隊が設置されている」と、武力行使を可能とする自衛隊増強の事実を暴露した。

 沖縄からは沖縄国際大学学生の伊禮聖さんと友利和子さんが証言。「米軍はヘリ事故の2日後にはイラク派兵に向けた離発着訓練を開始した。世界の戦争に直結した普天間基地撤去の重要性を強く感じた」と米海兵隊の作戦を支えた小泉を厳しく批判した。

イラクで弟を失った悲しみを訴えるエリック・ブリッケンスタフさん(12月12日・東京)
写真:証言するエリック・ブリッケンスタフさん

 米海兵隊員の弟をイラクで亡くした「声を上げる軍人家族の会」のエリック・ブリッケンスタフさんは「市民権のない弟は高等教育を受けたいという強い希望で軍に入った。軍隊にはマイノリティや貧しい人が多い。ブッシュのイラク戦争には大義がない。米兵などすべての兵士を帰還させてほしい」。

 論告の最後に、検事団長のロメオ・カプロン弁護士は「どのような力がこの戦争を止めるのか。民衆のスーパーパワー、ピープルパワーだ。世界中の人々の力で占領軍の撤退を求め、独裁に抵抗する人間的な世界を作り上げよう」と呼びかけた。

 最終公判は来年3月5日。共同代表の一人・伊藤成彦中央大学名誉教授は「公判後も、イラクの侵略と占領が終結するまで民衆法廷運動は継続していこう」と訴えた。

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