2004年12月29日発行869号

【各地に拡大する無防備地域宣言運動 戦争阻止する力は地域に】

1月14日署名開始 荒川区

街頭で受任者・協力者を募る(12月19日・荒川区)
写真:のぼり旗と横断幕を張った街頭の受付で立ち止まる通行人

 荒川区では1月14日から無防備地域宣言を内容とする条例の制定に向けた直接請求署名が開始される。条例案提出には有権者15万人の50分の1にあたる3000人の署名が必要。

 無防備地域宣言をめざす荒川区民の会は、その3倍の1万筆、受任者300人獲得を目標に、5万枚のビラ入れなど年内いっぱい地域をかけ回る。

 同会は10月24日に結成され、11月20日には事務所開きが行われた。以降、区内の駅頭や商店街でビラをまき、受任者登録を呼びかけてきた。ある商店街では「千葉県在住ですが、勤務が荒川なので何か協力したい」「平和が一番」などの声が寄せられ、2時間で受任者7人、協力者2人が登録した。ビラを持ち帰った後電話を事務所に入れて、受任者を引き受け、1万円をカンパした人もいる。受任者は70人を超え、協力者は20数人となった。

 この動きにマスコミも注目し始めている。朝日新聞や連合通信に続き、東京新聞が「草の根反戦 新しい風」(12/16)の見出しで大きく取り上げた。

23区初の取り組み

 荒川の取り組みは東京23区では初の試み。会事務局長の高瀬幸子さんは「イラクへの自衛隊派兵、国民保護法制定など日本は戦争する国にどんどん深入りしています。国が決めることだから何もできないと手をこまねいてはいられない。無防備地域宣言は地域から戦争に向かわせない力になります。ないがしろにされる憲法を地域に根づかせる運動でもあります。都内の多くの人々に発信したい」と話す。

 1月28日からは、神奈川県内で初めてとなる藤沢市での署名もスタートする。沖縄に次ぐ在日米軍基地を抱える同県での無防備地域宣言運動も注目される。

否決されても続く 枚方市

 2万をこえる市民の願いが込められた「平和・無防備都市条例案」を枚方市議会は12月17日、本会議で否決した。 直接請求したことで開かれた11月臨時議会は、「慎重な審議を行う」と総務常任委員会に審議を付託して閉会。その総務常任委員会は12月9、15日の2日間開かれただけで、否決。12月定例議会の最終日に本会議でも否決した。

 委員会の質疑は2日間でわずか3時間半。請求代表者が求めた参考人招致や意見陳述の追加も認めなかった。「慎重な審議」とは名ばかりの「拙速な審議」だった。

 実現する会の大田幸世さんは「議員の質疑に対して、条例案を提出した私たちがなぜ答えられないのか。条例案を否定する市当局しか答弁できない。このシステムは、やはりおかしい」と審議を振り返る。

政府見解そのまま

 質疑では、条例案に賛成する議員から「無防備地域を宣言できる『適当な当局』は自治体であることは、ジュネーブ条約をよく読めば分かるはず」と再三指摘されたが、市側の答弁は「国しかできない」との政府見解を繰り返すだけだった。

 大阪市での経験を受け継いだ枚方市だが、大田さんは「否決は残念。でも落胆はしていない。これが第二のスタート地点。法律論的な議論は大阪市よりも深まった。もともと枚方市だけの運動だとは思っていなかった。ドイツの『南ドイツ新聞』が枚方の取り組みを掲載してくれたように、全国、全世界に次々と広がることが大事」と語る。

 実現する会のメンバーからも、「もう一度やりたい」「地方自治のあり方を学ぶために市長を連れてアメリカ・バークレー・ツアーを実施しよう」などの意欲的な声が出ている。

 12月19日、無防備地域宣言をめざす集会が全国各地で開かれた。実現する会のメンバーは枚方市の経験を伝えるために、首都圏、高槻市、西宮市の集会に駆けつけた。

実現する会を結成 西宮市

「実現する会」スタートの集い(12月19日・西宮市)
写真:集会会場風景

 「西宮市に『平和・無防備条例』を実現する会」が12月19日に結成され、スタート集会には約80人が参加した。

 大阪・枚方の運動を受け継ぐ西宮の運動は、「戦争の原因である恐怖と欠乏を、武器を社会からなくしていく」(条例案前文)取り組みとして無防備条例を市民に広く伝える。

 イラク・ファルージャ虐殺のスライド報告やイラク市民レジスタンス連帯運動の紹介ののち、沖縄・元読谷村長の山内徳信さんが「自治と平和創造の村−読谷村」の特別講演。参加者がとくに感銘を受けたのは、地方自治のあり方の問題だ。「基地建設の白紙撤回を求めて、当時のカーター米大統領に手紙を出したところ、政府側がかんかんに怒った。『外交は国の専管事項だ』と。私はこう言った。私がしたのは、民間外交、自治体外交だ」

 会の呼びかけ人のひとり、在間秀和弁護士も「自治体外交に勇気づけられた」と感想を語る。「地方分権をめぐる論議で、国がやるべき国防と外交以外は自治体で何でもできる、というのがあった。はたして国防と外交は国しかできないのか。これをどう突破するのか。足元からの平和創造を考えるとき、この運動はとても重要だ」

 西宮の会は、来春をめどに無防備条例制定の直接請求署名を予定している。

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