2005年03月25日発行880号 ロゴ:なんでも診察室

【がんばれば変えられる】

 「なみだはどうして出るの」「いのちは、からだのどこにあるの」などと、子どもや孫に聞かれたら、皆さんはどう答えますか。中には「ミミズのお顔はどこにあるの」なんてのもあります。

 こんな質問と、それに対する楽しい答えがいっぱいの絵本「なぜなぜいっぱい」(草土文化)を著者の山田真さんから送ってもらいました。ちなみに、なみだは喜んだり悲しんだりを、相手にわかってもらえるように出るのでしょう、と答えています。

 山田さんは大変有名な小児科医なのに「目を保護するため」などと言わないところがすごいなあと思うわけです。これをよめば、相手が涙ぐんだ時、その涙を出させたのはどんな感情だろうと想いをめぐらすのではないでしょうか。

 それでは、いのちはどこにあるのでしょう。これは、脳死問題で脳か心臓かと大議論になったことです。山田さんは人間一人を作っている60兆個という細胞すべてにいのちがあると答えています。そんな極めて複雑な命の集まりなんだと、人の命の尊さを説明しています。

 「なんのために人間はいきているのですか?」との問いに、歴史を作っている一人の人間として、地球を住み良いところにするためにがんばりたいと思っている、みんなもずっと考え続けて下さい、としめくくっています。山田さんは、お子さんが障害をもったので、障害児の教育や生活保障の闘いをしてこられ、がんばれば世の中を変えられるという確かな感覚を持っておられるのだと思います。

 今の子どもたちを取り巻く環境は、何のために生きているのかをますますわかりにくくしています。がんばって高校・大学まで行ってもやりがいのある安定した仕事はなかなかありません。アルバイトを転々とする若者が、政治家などに非難されています。

 しかし、飲食店などでアルバイトらしき店員を見て下さい。たぶん最低賃金ぎりぎりの時間給でどうしてあんなに働けるのかと思う程良く働いています。僕らが学生の時のアルバイトなんて少ししか働きませんでした。

 最近、ウラニウム兵器廃絶運動に取り組んでいる青年たちと、世界をどう認識し変革するのか、理論と実践の関連はどうか、などを真剣に話合うことができました。グローバル資本のしもべではない生き方を真剣に模索する青年が増えていると実感しました。なんだかうれしくて、診察室で泣きわめく子どもたちを見ても、この子たちと共に歴史を前進させることができるのだ、と改めて実感できるようになりました。

    (筆者は小児科医)

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