2005年07月08日発行894号

【鉄道の再国有化の流れを強めよう 民営化を裁くシンポへ

 JR福知山線事故の原因究明と責任の所在を明らかにする動きの中から、国鉄分割民営化の見直し・再国有化を求める声が高まってきている。7月中旬には、鉄道事業の再国有化運動を進めるイギリス鉄道海運労組(RMT)の代表が来日。鉄建公団訴訟原告団やJR株主・市民の会などとともに民営化を裁くシンポジウムを開く。


批判集中の株主総会

マスコミの注目を集める「JR株主・市民の会」の宣伝行動(6月23日・大阪)
写真:

 6月23日に開かれたJR西日本の株主総会。会場となった大阪・中之島のホテル玄関前で、「JRに安全と人権を! JR株主・市民の会」は横断幕を掲げて、入場する株主に事前質問書を配布した。

 「JR西日本の『明日』を変えましょう。変えるのは『株主』です」と訴える質問書は15項目にわたる。

 注目されるのは、旧国鉄の「安全綱領」だ。「1.安全は輸送業務の最大の使命である」「4.安全の確保のためには、職責を超えて一致協力しなければならない」「5.疑わしいときは、手落ちなく考えて、最も安全と認められる道を採らなければならない」などの5項目を引用し、「JR西も『安全綱領』の復活を検討すべきではないか」と民営化の見直しを呼びかけた。

幕引き図るJR西日本

 午前10時に始まった株主総会の冒頭、「JR株主・市民の会」は「総会を公開にすべき」と動議を出したが、会社側は無視して総会を強行。

 それでも約2000人が参加した株主の中からは、JRの安全性に対する疑問や批判が相次ぐ。

 「JR株主・市民の会」の桐生隆文代表もマイクを握る。桐生さんが訴えたのは、株主オンブズマンとともに5月6日に提出した要請書に対するJR西日本の回答への批判だ。公平・中立で独立性の高い社外取締役や安全監視委員会の設置などを求めたのに対して、JR西日本はまともに答えなかった。

 桐生さんは、「安全諮問委員会メンバーに住友金属工業の元労務担当が入っているが、同社はJR西日本が購入する台車の納入業者だ。事故の被害者の多さには、車両の構造が関係しており、彼は利害関係者だ」「社外取締役の人選も不当だ。オムロンの社長が入っているが、オムロンも自動改札、自動販売機の納入業者。取締役会のチェック機能が果たせない」「安全担当の社外取締役に交通システム工学の専門家といわれる東大名誉教授の名がある。しかし、彼はJR信楽線事故でJR側の意見書を書いた人物であり、今回の事故を解明する安全担当としては公平でない」などと指摘。「総じて、JRはまったく変わっていないし、変わろうとしていない」と批判した。

英国の鉄道労組が来日

 「ノーモア尼崎事故!『民営化を検証する』国際シンポジウム」が7月14日、東京で開催される。

 来日するのは、イギリス鉄道海運労組(RMT)の代表。イギリスでも1996年に鉄道を民営化したが、2000年に起こったハットフィールド脱線事故を契機に民営化の見直しの機運が高まる。RMTは鉄道事業の再国有化を求めて、全国キャラバンなどを展開する労働組合だ。

 シンポジウム実行委員会は、JR株主・市民の会をはじめ、JR東日本株主会、鉄建公団訴訟原告団、国鉄闘争共闘会議、国労に人権と民主主義を取り戻す会で構成する。7月13日は尼崎でも関西のつどいを開催する。

 RMTの代表は7月15日に東京・日比谷野外音楽堂で開かれる全国集会にも参加し、勝利判決獲得へ最大の山場を迎える鉄建公団訴訟原告団への連帯のエールを送る。

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