ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗 2005年09月02日発行901号

第73回
『コリア戦犯法廷(4)』

 コリア戦犯法廷は、2001年6月23日にかけて、ニューヨークの国際教会センターで開かれた。

 23日は、最初に被害生存者、検事、陪審員、共同議長の紹介を行い、共同議長サラ・フラウンダーズとジョン・ユミが開廷を宣言した。続いて主任検事ラムゼー・クラークとソ・ビョンジュンによる起訴状紹介が行なわれた。

 起訴状は時期別に訴追をしているので、1945年から50年にかけての平和に対する罪や済州島虐殺についてはマラ・ヴェレイデン・ヒリヤード検事が担当し、リ・ドヨンとオ・ジョンリュルが報告した。1950年から53年にかけての韓国における老斤里(ノグンリ)事件その他の戦争犯罪についてはファン・シムジェ検事が担当し、被害者証言が行なわれた。同時期の朝鮮における民間人虐殺や生物兵器使用についてはレノックス・ハインズ検事が担当し、チャールズ・オーバービーやアン・ベッカーが証言した。続く冷戦時代に関してはワークショップ形式で分科会が開かれた。1953年から2000年にかけての韓国における政治的抑圧と軍事独裁、朝鮮に対する経済制裁についてはキム・スンキョ検事が担当し、パク・セギル、デイヴ・ウェルシュ、キム・ジョンキらが報告した。さらに、劣化ウラン弾についてレイ・ブリストウ、梅香里についてイスマエル・グダループ、労働者の連帯についてグロリア・ラリヴァ、経済制裁についてサンドラ・スミスなどの証言が行なわれた。

 こうした証言や報告を受けて、最後に、判決が言い渡された(次回紹介)。

 証言や提出文書の一部は、起訴状や各種の報告書とともに、国際行動センター(IAC)のウエッブサイトに掲載されている。

 ブルース・カミングス(シカゴ大学教授)「済州島蜂起抑圧についてのアメリカの責任問題」は、済州島事件50周年の1998年に執筆された歴史研究である。韓国において半世紀を経て光をあてられた事件について、アメリカ側の資料を渉猟して当時のアメリカ軍の責任を解明している。

 パク・スンヨン(テンプル大学、韓国メソジスト教会)「朝鮮戦争50周年に老斤里虐殺を考える」は、虐殺事件を隠蔽した軍事政治構造を指摘して、老斤里は氷山の一角にすぎないとし、朝鮮側における民衆虐殺は数え切れないとする。

 ブライアン・ウィルソン(平和のための退役軍人会)「ヴェトナムと似た朝鮮:嘘に始まり、続けられた戦争」は、第2次大戦後の「冷戦」と呼ばれた世界情勢の中での朝鮮戦争の意味を問い直し、アメリカがその教訓を生かすことなくヴェトナム戦争へ移行したことを指摘する。

 ダイドル・グリスウオルド「朝鮮戦争秘史:洞窟の秘密」は、新聞「労働者世界」に掲載された記事だが、虐殺の行なわれたデウオン渓谷の春の陽射しにゆれるアカシアの景色から始めて、歴史の彼方に埋もれようとしてきた戦争の一断面を描く。

 韓国真相委員会が準備した文書「朝鮮戦争後に米軍兵士が行なった犯罪」は、1998年に起きたユン・グミ殺人陵虐事件をはじめ8件の被害事件を報告している。

 平和な朝鮮市民ネットワーク「韓国における米軍が犯した犯罪統計」は、駐韓米軍による各種の犯罪について、10万の犯罪事件と被害者がいることを示している。

 カレン・タルボット「韓国における射撃場:地上に地獄を!」は、梅香里などにおける駐韓米軍による射撃訓練の激しさ、それがもたらした被害、そして民衆による抵抗の盛り上がりを報告している。

 なお、6月24日には国連、ラルフ・バンチ公園から一番街、バルチモア、統一メソジスト教会、そしてワシントンへのデモを行なった。

 さらに、6月25日には朝鮮戦争51周年記念式を行い、記者会見で有罪判決を公表した後、判決を持ってホワイト・ハウスに向けたデモを行なっている。

 

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS