ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗 2005年10月14日発行907号

(76)『コリア戦犯法廷(7)』

 2003年7月24日・25日、平壌で「朝鮮におけるアメリカの犯罪に関する平壌国際法廷」が開催された。

 2001年のニューヨークにおけるコリア戦犯法廷には、韓国からの代表や証人、在日や在米のコリアンが参加したが、朝鮮代表はアメリカ政府による入国拒否のため参加できなかった。そこで平壌法廷が行われることになった。2003年7月22日から29日にかけて、平壌で「朝鮮半島の平和を求める国際会議」が開催された際に、法廷もその企画の一つとして取り組まれた。国際会議は、世界人民との連帯を求める朝鮮委員会、朝鮮民主法律家協会、国際民主法律家協会が主催し、25か国からの参加があった。国際会議は朝鮮戦争停戦50周年行事でもあった。

 同法廷の起訴状は冒頭において次のように論じている。

 1866年のシャーマン号事件以来今日まで、アメリカは、朝鮮人民に対して侵略、略奪、殺人、破壊などのあらゆる犯罪行為を一貫して犯し、許しがたい災難と苦痛を与え続けてきた。

 第2次大戦後、アメリカは朝鮮南部を軍事占領して朝鮮を分断し、朝鮮戦争を引き起こした。その重大な経験に学ぶことなく、アメリカは朝鮮半島に対する新しい戦争準備を続けてきた。まさにこの瞬間にも、アメリカは戦争挑発者が権力を握って、朝鮮に対する抑圧に狂奔し、核戦争の挑発を行っている。

 平壌国際法廷共同検事団は、民主的な国際組織、進歩的な反戦平和組織、正義を愛する諸個人と法律家の協力を得て、アメリカ政府、アメリカ軍その他によって朝鮮半島において行われた犯罪について本起訴状を提出する。

 被告人は、トルーマン政権からブッシュ政権にいたる大統領全員、国務長官全員、国防長官全員、統合参謀本部長全員、陸海空軍長官全員、CIA長官全員、大統領の国家安全顧問全員、在韓米軍指揮官全員、本起訴状に記載された犯罪行為を計画・準備・組織・命令・実行した全ての者、その共犯者、朝鮮人民の大量殺害関与者全員である。

 起訴状は、被告人らが違反した法律文書を11種類に分けて指摘している。

1.アメリカは国連憲章(特に憲章2条の平和と安全を維持する義務、憲章5条の安保理事会手続き、憲章6条の紛争の平和的解決、憲章7条の平和に対する脅威となる行為)に違反した。

2.アメリカは朝鮮南部を占領することによってカイロ宣言とポツダム宣言に違反して朝鮮の民主的発展を妨害した。

3.アメリカは朝鮮戦争を引き起こし、新しい戦争を準備してきた。これらは国連総会の「侵略の定義」において定義された侵略行為である。

4.アメリカは平和に対する罪、戦争犯罪、人道に対する罪を犯してニュルンベルク憲章と東京裁判憲章に違反した。

5.アメリカはハーグ陸戦法規慣例条約に違反して、毒性兵器を使用した。

6.アメリカは戦時における民間人の保護や戦争捕虜の処遇に関する1949年のジュネーヴ諸条約に違反した。

7.アメリカは世界人権宣言、ジェノサイド条約、人種差別撤廃条約、市民的政治的国際人権規約、経済的社会的文化的国際人権規約、戦争犯罪時効不適用条約、アパルトヘイト禁止条約に違反した。

8.アメリカは核兵器不拡散条約、テロリズム予防条約、麻薬生産制限協定、麻薬生産売買予防ジュネーヴ条約その他の条約に違反した。

9.アメリカは武力行使に関する慣習国際法に違反した。

10.アメリカは1953年朝鮮停戦協定、1993年の朝米共同宣言、1994年の朝米枠組み合意に違反した。アメリカは6・15南北共同宣言の実行を妨害した。

11.アメリカは朝鮮、中国、日本、アメリカの国内法にも違反した。

 

<参考文献> Indictment for Crimes Committed by the United States of America against Korea. Pyongyang International Tribunal,24-25 July 2003.

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