2005年12月02日発行914号

日米首脳会談

【先制攻撃で「国益」追求を宣言 アジアの平和破壊する両首脳】

 韓国プサンでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議を前にした11月16日、日米首脳会談が京都で行なわれた。小泉とブッシュは、在日米軍再編を通じた日米侵略同盟の強化を首脳同士の国際公約として確認した。この戦争路線は、イラク占領軍撤退と平和を求める内外の世論に逆行し、アジアの諸国とのあつれきを広げるものであり、その思惑通りには決してならない。


米軍再編中間報告が要

 日米首脳会談は、「地域と世界の平和のためのアンカー(いかり)」(ブッシュ大統領)としての日米軍事同盟をいっそう強化し、イラク侵略・占領に示される先制攻撃を世界のどこであれ遂行することを確認した。

ブッシュ来日に抗議する行動(11月12日・東京)
写真:「小泉ブッシュは世界から追放!沖縄辺野古の基地建設反対!自衛隊・全占領軍は今すぐ撤退!ブッシュ来日抗議アクション」と書いた横断幕を先頭に更新する人々

 飾り言葉として「アジアや世界の平和と安定」をどれほど繰り返そうが、つまるところ日米首脳会談は、米国と日本のグローバル資本の覇権のための共同戦略を両国首脳が確認する場である。

 その目標は、グローバル資本の利益に逆らう国や地域を軍事力でつぶすことにある。

 日米安全保障協議委員会(2プラス2)が10月末に発表した在日米軍再編の中間報告は、米軍と自衛隊の侵略合同軍化と日本の出撃拠点としての機能強化を打ち出した。

 中間報告は、日米同盟の協力の重点として「国際的な安全保障環境の改善」を打ち出し、共同軍事行動の限界を取り払い、行動範囲を地球規模に広げた。具体的な軍事行動(別表)には、先制攻撃を支援する空中給油、攻撃空母への海上補給、攻撃部隊の大量・高速輸送そして制圧後の共同軍事占領までも含めた。そして統合司令部を設置し共同作戦訓練を遂行するために、在日米軍基地と自衛隊基地を統合する全国の基地再編を打ち出した。

国民へ犠牲強いる小泉

 この在日米軍再編成の好戦性は、在韓米軍再編と比較すればいっそう際立つ。在韓米軍再編では、3万5千の兵力の3分の1強の1万2500人が削減され、韓国の基地負担の軽減、朝鮮半島の緊張緩和をめざすノ・ムヒョン政権の意向が反映されている。ノ・ムヒョン大統領は在韓米軍の朝鮮半島域外への出動に対しても一定の歯止めを米国に要求している。

 中間報告による基地再編は、全国の米軍基地・自衛隊基地周辺での被害と負担増大をもたらすという地元からの批判をかつてなく広げることになった。

 これに対して小泉は、「平和と安全という恩恵を受けるためには、しかるべき代価を払わなければならない」として、この中間報告の実行に「最大限努力する」とブッシュに約束した。

 在日米軍再編を通じて自衛隊の侵略軍隊化を達成するためである。これこそが「世界の中の日米同盟」強化の中身である。 

窮地のブッシュを支援

 日米首脳会談で小泉は、自衛隊のイラク派遣延長をブッシュに約束した。今回の会談は、ブッシュが政権発足以来最大の窮地に追い込まれる状況の中で行われた。

 イラク開戦でブッシュ政権が米国民を欺く情報操作を行ったことが公然と暴かれ、イラクでの米軍戦死者は2千人を超えた。また、戦争政策優先がハリケーン被害を拡大するなど国民軽視への批判が高まり、政権支持率は30%台にまで下落している。

【自衛隊と米軍の役割・任務・能力を検討する重点分野 (中間報告から)】

・日本の防衛及び周辺事態への対応(新たな 脅威や多様な事態への対応を含む)

・国際平和協力活動への参加をはじめとする 国際的な安全保障環境の改善のための取組

 英・豪軍が来年春からイラク撤退を開始する意向を示し、イラク政策に米国民の60%が反対する中、米上院までがブッシュに駐留米軍削減計画を求める法案を採択した。

 自衛隊の派遣延長に対しては、日本の世論調査でも7割以上が反対を表明している。このような中で小泉は自衛隊派遣延長を約束し、ブッシュ支援のエールを送った。

 ブッシュは「同盟国日本からの支持」を米国民への言い訳に利用し、小泉は「対米公約」を占領継続の言い訳に利用する。撤退要求や派遣延長反対の世論を押し切り、あくまでグローバル資本の権益を確保するためだ。

 小泉・ブッシュが互いに「イラク復興支援」を賞賛し占領継続をたたえあっても、それは、イラク民衆と日米両国民の意思を無視し、民主主義を否定したものである。

警戒感強める韓国・中国

 会談を注視したアジア諸国は、日米合意がアジアの緊張を激化させる危険なものであることを見抜いている。

 小泉は、自身の靖国参拝強行が生み出した中国や韓国とのあつれきや外交関係の停滞への批判を一蹴した。

 首脳会談後の会見で小泉は「日米関係はほどほどにして、他の国との友好関係を強化することによって補ったらという考え方が一部にあるが、そういう考え方は全く取っていない」と断言した。「日米同盟が緊密化するほど中国、韓国、アジア諸国、世界各国との良好な関係が築ける」というのだ。

 この言葉ほど対立と緊張を煽るものはない。要は、友好はいらない、日米の先制攻撃力を高め力ずくで国益を追求すると宣言しているのである。

 中国と韓国は日米首脳会談に合わせて首脳会談(11/16)を行い、小泉の靖国参拝問題をはじめとする歴史認識問題を取り上げ共同歩調をとることを合意した。

 また、日米首脳会談を受けて行われた米韓首脳会談(11/17)でノ・ムヒョン大統領は、ブッシュに対して「朝鮮半島と北東アジアの侵略の歴史と歴史認識問題」についての見解を披露して日本を批判。朝鮮の核問題に関連しては「アジア域内の秩序を、対立ではなく協力と統合の構図に導くために力を合わせる必要がある」と語った。

 APEC首脳会議に参加した小泉はプサンでノ・ムヒョン大統領との首脳会談を行ったが、「儀礼的会談」と言われ、何の成果も得ることはできなかった。

 ◇   ◇   ◇

 朝鮮半島の非核化にむけて動き出した6か国協議の枠組みは、緊張緩和と安定を求める東アジア地域全体の要請を背景にしている。12月に予定されている東アジア首脳会議(クアラルンプール)も、東アジアの平和的な協力と統合による発展を求める流れの中から生まれてきた。この流れに逆らい日米軍事同盟の侵略的強化を打ち出した小泉・ブッシュ路線に未来はない。それは日米の孤立を深める道でしかない。

 平和を求めるアジア民衆・イラク民衆と連帯し、自衛隊撤退の闘い、基地再編に反対する闘いが問われている。

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