2005年12月09日発行915号

【2005 アジアはともだち!コンサート / 子ども自身で築き上げたステージ / 「平和へのメッセージ」を発信】

 「2005アジアはともだち!コンサート」(主催・同実行委員会)が、東京(11/20)・大阪(11/19)で開催された。このコンサートは、昨年まで沖縄の音楽家・海勢頭豊さんと行ってきた親子コンサートを継承したもので、通算14回目となる。今回の特徴は、ステージの企画立案から運営までを子どもたち自身が担い、平和へのメッセージを発信したことにある。新たな一歩を踏み出した子どもたちの取り組みを東京会場からみていこう。

笑顔に包まれた会場

お母さんと一緒に「アジアは友だち」(11月20日・東京)
写真:小さい子どもが手をつないで熱演

 「ありがとうございました」「よかったよ」「あ、どうも」―あちこちで笑顔が生まれ、握手が交わされる。11月20日東京で開かれた子どもコンサート終了後、出演した中学3年生が勢ぞろいして観客を見送った。コンサートの成功を象徴する場面だ。

 「アジアはともだち」をテーマに、企画から運営、ステージまですべてを子どもたちで進めてきたコンサートは、観客から共感を引き出した。

 寄せられたアンケートには、「大きい子も小さい子も国をこえてみんなが寄りそっている、そんな印象のコンサートでした。顔の想像できるともだちとは、なかよくなりたいけど戦争はしてほしくないって思いました」(40歳代・女性)「平和について一生懸命考えているのが伝わってきました。お互いを知るというのは、とても大事なことですよね」(30歳代・女性)「平和―一番大事にしなければならないことを身につまされたと思いました。どうしたらいいか、自分でもこれから考えていきたい」(30歳代・女性)などと記されている。

沖縄、韓国からの参加者と一緒に歌いあげた『平和な世界』(東京会場
写真:韓国、沖縄それぞれの衣装でみんなが合唱

 約2時間の舞台には、子ども全国交歓会の小中高生とともに韓国「虹の会」の小学生、東京朝鮮第1初中級学校の生徒、沖縄読谷村から渡慶次獅子舞クラブ・座喜味棒術クラブの小中学生らが参加。歌・踊り・演奏を次々と披露した。

 合間に入る“平和のメッセージ”と演目とはストーリーとして十分つながっているわけではない。しかし、アンケートに示されるように「アジアはともだち」を実感できるコンサートに仕上がった。その要因は、韓国や沖縄の子どもたちも一堂に会して発表していること、子どもたち自身が主催して必死になって取り組む姿が見て分かることにあった。

戦争を直視する中で

コンサートの中心を担った中学生部の和太鼓(東京会場
写真:和太鼓を中学生たちがたたく

 コンサートの中心を担ったのは子ども全交で学んできた中学生。沖縄に出向いて沖縄戦跡や米軍基地を見学し、読谷まつりにも参加。韓国ではホームステイし、交流してきた。この過程で築かれた人のつながりが、コンサートを構成し、元気な発表の土台になった。単に大人のつくるストーリーに合わせたり、誰かに指示されるのとは違い、自分たちでつくろうとする意欲が共感を呼んだ。

 “平和のメッセージ”は、子どもたちのアジア・沖縄への関わりを素直に表現するものだった。

 10月8日に靖国神社をフィールドワークで訪れた中学2年生の林みな美さんはこう語る。「戦争が歴史の一部分としてきれいに飾られているだけでした。戦争で被害にあった人たちの苦しみや悲しみはどこにもなく、ただただ日本は戦争をして正しかったんだというような雰囲気でした」

 コンサートのリーフレットに中学生は記している。「自分を犠牲にしてまで(人間魚雷)死んでしまう人がいることに驚きました。このことを韓国の子どもたちが知ったら日本人をどう思うか、韓国の子どもたちとも仲良くできなくなってしまうのかと思ってしまった」。加害者の側としての立場を認識することが被害者と友達になる基本であることを訴えるものだ。

 林さんはさらに続ける。「世界のどこかで今も紛争やテロが起こったり、食料や水、寝る所さえない人たちがいます。そして今でも日本と韓国の間では竹島問題や教科書問題などが起こっています。世界中のすべての人が安心し、自由に暮らしていける社会をつくりたい。そのためにまず、お隣の国の韓国や朝鮮、アジアの人たちと仲良くしていくことから始めていくべきだと思います」

確かな達成感

一枚一枚に平和への思いを書いた虹の背景画(大阪会場
写真:七色の虹のバックにみんながならぶ

 これに応え韓国のジン・ハンソルさん(小5)は「(1月のソウルの交流会で)お互いのプレゼントを交換して、一緒に笑って楽しんで。こんなことが世界平和の土台になると思います」とメッセージを読み上げた。

 コンサートの終了直後、シナリオのたたき台を書いた河辺友洋くん(中3)は満面に笑みを浮かべて語った。「子どもたちだけでつくったという達成感があります。韓国と沖縄に行き、日本に植民地化された韓国の人、沖縄のガマで犠牲になった人、同じだと思った。その思いをシナリオにしたかった。こんなコンサートや交流は学校ではできないことです」

 韓国「虹の会」の母親キム・ソナさんは2回目の参加。「子どもたち自身がつくったコンサートに感動した。ビデオを送ってください。みんなにも見せたい。私たちも韓国でこのような取り組みをつくっていきたい」。初参加の母親ソン・ジョンヤンさんは「子どもたちのよい関係ができうれしい。いろんな人が集まって、活動を広げてください」と期待を寄せた。

 コンサートは平和なアジアへ、確かな一歩になったに違いない。

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