2005年12月30日発行918号

【寄稿 無防備地域宣言・沖縄ネットワーク 事務局長  西岡信之 沖縄に「国民保護計画」は相いれない 非武の島には無防備地域宣言こそ】

沖縄ネットワーク結成の集い(11月20日・那覇)
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「有事に基地内避難」

 「有事に基地内避難―離島は漁船も動員―沖縄県国民保護計画案が判明」と、12月13日付けの沖縄の新聞2紙が一斉に報じた。沖縄県防災危機管理課に問い合わせると、「新聞報道は、指定地方公共機関などに事前に検討案として配布したものが出回ったもの。あくまでも、12月22日に開催される第2回沖縄県国民保護協議会で素案を発表する」と説明におおわらわだ。

 新聞がリークした検討案とはいえ、22日に素案として発表されるものとたいした違いはないだろう。検討案では、米軍基地周辺の北部と中部で「孤立する地区が生じる恐れがある」と指摘し、周辺住民や基地従業員について「基地内の通行や基地内への避難も含め」調整するとしている。また離島については「漁船の使用も含めて輸送手段として確保する」とされている。

 孤立する恐れがあると指摘されたひとつ―米軍基地と海に挟まれる北谷町役場、そして基地従業員で組織される全駐労から、「有事に基地に逃げ込むのは余計に危険だ」「基地は攻撃のターゲット、県の真意がわからない」と早くも懸念の声が上がっている。また、宮古や八重山の離島では、本島との中継地となる宮古島や石垣島にいったん避難する際に漁船の使用が言及されている。地元漁民は「住民を2時間半も乗せることなど怖いし考えられない」と戸惑いを隠せない。

軍隊は住民を守らない

 全国で最も国民保護計画策定が遅れている沖縄県。その背景には、沖縄戦の体験がある。「軍隊は住民を守らない」が沖縄戦の教訓として今も県民に重くのしかかっている。地元の放送局が戦後60年の今年制作・放映した沖縄戦特集のいくつかの番組でも、「日本軍が駐屯した地区が戦争被害の割合が極度に高かった」事実が改めて示され、県民には、有事に際しては「軍とは別行動」という認識が一般的だ。「沖縄戦の教訓に学んでいない」と批判が出るのも当然だし、「なぜ今、戦争の準備なのか違和感があるし、気味が悪い」というのが県民の正直な実感だろう。(12/13沖縄タイムス)

 しかし沖縄県の計画では、第2回県国民保護協議会で素案を提起し、年明け1月の第3回協議会で諮問、3月の第4回協議会で答申を得るとしている。正月をはさむ年末から年明けにかけた1か月間の県民意見公募制度(パブリックコメント)も予定されているが、どこまで県民にこうした動きが伝わるのか、はなはなだ疑問だ。

 10月25日に開催された第1回国民保護協議会では、会長の稲嶺恵一沖縄県知事が議事を進行。出席した沖縄の公的機関・団体の責任者で構成される協議委員から何の発言も意見も出されず、1時間の会議がわずか30分で終了するという異常なものだった。政府が作成したガイドラインに沿った形で県の方針案が提案され、その内容について誰からも意見がないまま、既成事実だけが積み重ねられているのが今の実態だ。

広く県民に伝えて

 11月20日に結成した無防備地域宣言・沖縄ネットワークは、竹富町など八重山での無防備運動への全面的な支援体制を確立することを第1の目的としているが、戦時意識を浸透させる国民保護計画についてその欺瞞性を県民に広く伝えていくことも目的のひとつだ。

 呼びかけ人の1人で沖縄ネットの事務局会議に参加している平良識子さん(那覇市議)は、12月7日の那覇市議会代表質問で、国民保護計画と無防備地域宣言について那覇市の見解を問いただした。那覇市当局は、県からの具体的な提案がない段階では応えられないと平良さんの質問に対し否定的な答弁を繰り返した。

 新憲法制定、イラク派兵延長、日米軍事一体化と戦争国家づくりを着々と突き進む小泉政権。自治体の足元からの戦争体制づくりを県国民保護協議会や各市町村議会で「無風状態」のまま追認させることは、何としても食い止めなければならない。

 年明け早々に、国民保護計画の問題点を県民に広げ、1人でも多くの県民の意見を県政に届けたい。

  (2005年12月13日記)

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