2006年01月20日発行919号 ロゴ:なんでも診察室

【風邪の予防と治療】

 急に寒くなって、インフルエンザなどの風邪がはやってきました。ワクチンやタミフルの批判もいいが、風邪に対してどうすればいいか考えろ、との声も聞こえます。そこで、ちまたに溢れる医師などの単なる「意見」でない、きちんと研究されたことに絞って対応策を考えます。

 予防法では、患者に近づかないことが第一ですが、満員電車や保育園で近づくなと言えません。

 それでは、うがいはどうでしょうか? 外国ではうがいの習慣がないのか、日本人の研究ばかり3編を見つけました。一つは最近新聞に載りましたが、1日2回の、単なる水でのうがいで、風邪をひいた人が1〜2割程度少なくなっています。ヨウドの入った殺菌液では効果がなく、薬液がのどなどの粘膜を痛めるかも知れません。鋳物工場の労働者が1日3回のうがいで効果があったとする1996年の研究もあります。ブラックティーによるうがいで、インフルエンザ感染が14%程度減ったという報告もあります。あまり確かでないにしても、多少の効果は期待できそうです。

 手洗いはどうでしょうか? 程度の良い研究は1つでした。学生にしっかり手洗いをさせたら、しなかった場合より、風邪・インフルエンザにかかりにくかった、というものです。ビタミンCも昔から効果があると言われてきました。しかし、多数の研究を検討すると少しは良いかも知れないかな? 程度です。私の故郷の有田ミカンはビタミンC、プラスおいしさでおすすめです。その他、普通のマスクを含めて予防法の研究は見つかりません。

 次に、かかってしまった時にはどうするかです。最も効果が証明されているのが、暖かく加湿した空気です。相当厳密な6研究で症状を3分の1程度に減らすことが証明されています。欧米の研究ですが、日本でも、特に気密性の高い部屋で暖房をかけて空気が乾燥する冬には鼻・のどの保護になり、効果があると思われます。注意点は、レジオネラ菌などが繁殖しないタイプの加湿器を選び、霧の出口から直接吸い込まないことです。マスクが直接的に風邪の症状を軽減させた研究はありませんが、吸い込む空気を加湿しますので効果が期待されます。

 薬では、風邪による頭や節々の痛みには、アセトアミノフェンという鎮痛・解熱剤にすべきです。特に子どもには、その他の鎮痛解熱薬は危険です。また、咳には「粘液溶解剤」が効果があります。鼻が詰まって眠れない時は、鼻粘膜の充血を抑える点鼻薬が1〜2回は有効ですが、連用はだめです。

 蛇足ですが、ほとんどの風邪薬の効果は証明されていません。

(筆者は、小児科医)

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