2006年04月28日発行933号

(89)国際法を市民の手に

イラク世界民衆法廷(9)

前田 朗

 2004年5月8日、ニューヨークでイラク世界民衆法廷が開催された。

 呼びかけ文は「イラク戦争によって引き起こされた人間の苦しみに直面して、沈黙と不処罰の犯罪に抗して行動しなければならない」として、次の問いを提示している。

 ・「予防戦争」ドクトリンは国際法のもとで合法でありうるか。

 ・侵略戦争と占領によって犯された犯罪を記録することができるか。

 ・グローバルな反戦運動が圧倒的に反対したのに戦争開始を正当化できるか。

 ・正義と責任をもたらす手続きにおいて草の根の領域が役立ちうるか。

 第1に、侵略戦争について、ピーター・ワイス(ニューヨーク非核法律家委員会会長)が戦争の違法性を唱え、アイチャ・チュブックチュ(コロンビア大学院生、イラク世界民衆法廷実行委員会)がグローバルな反戦運動の概括を行った。

 第2に、軍事行動で行われた犯罪について、サラ・リー・ウィトソン(ヒューマン・ライツ・ウオッチ)が総論を展開し、ジェニファー・リダ(弁護士)が無差別爆撃を告発し、アスリ・バリ(弁護士)が裁判抜きの処刑や恣意的拘禁を取り上げ、ジョン・バラー(ニューヨーク非核法律家委員会事務局長)が劣化ウラン弾を取り上げた。

 第3に、占領下で行われた犯罪について、ロジャー・ニーマンド(経済社会権センター事務局長)が概略をまとめ、アントニア・ジュハズ(グローバリゼーションに関する国際フォーラム)が被害証言を行った。

 陪審団は次の13名で構成された。ラバブ・アブダルハディ(ニューヨーク大学教授)、サイナン・アントン(イラク人詩人、ダートマス大学教授)、デニス・ブルータス(ピッツバーグ大学教授)、ハミド・デバシ(コロンビア大学教授)、バイラヴィ・デサイ(ニューヨーク・タクシー労働者連合)、イヴ・エンスラー(作家)、ジェニー・グリーン(憲法的権利センター)、リサ・ハジャール(カリフォルニア大学助教授)、モタリラヴォア・ヒルダ・リニ(非核自由独立太平洋運動)、エリアス・コウリー(レバノン人作家、ニューヨーク大学客員教授)、イブラヒム・ラメイ(アメリカ友和会)、キヨコ・マックレー(ピース・ウィリアムバーグ)、ロバート・ヴァン・リーロップ(弁護士)。

 陪審の最終声明は、3つの告発事実を認め、アメリカが違法な侵略戦争を行い、そのもとで数々の戦争犯罪を犯したとする。アメリカが唱えた戦争理由は嘘であったが、仮にそれが本当だったとしても違法であるとする。イラク人民のためと言いながらイラク人民を殺害し、拷問した。民主化と言いながらイラク人民からの略奪を進めている。声明は次のような勧告を提示している。

 1.イラク人民の諸権利に対する侵害の即時中止。

 2.イラク軍事占領の即時終結。

 3.戦争犯罪者の国際法による裁判。

 4.イラク人民に対する補償。

 5.グローバルな反戦運動の強化。

 6.パレスチナ、アフガニスタンその他の違法占領の即時終結。

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