2006年06月09日発行938号 ロゴ:なんでも診察室

【学会会場でイラク絵画・写真展】

 4月21日から3日間、金沢で開かれた日本小児科学会に行ってきました。以前の私は、自分の発表や、特に興味のある発表を聴く以外は、高い会場費を取り戻そうと、ただのコーヒーをたらふく飲んだり、ソファーでゆったりすることが多かったのですが、今回は私の劣化ウランの発表を含めて、大変忙しく過ごしました。

 会場の金沢全日空ホテルのロビーで「イラク占領下の子どもたち―明日を夢見る自由を―絵画・写真展」が開かれました。小児科教授・病院長など22名の日本小児科学会員の賛同を受け、会長に要請して実現したものです。2年前、私たちがこの学会で劣化ウランの医学的解説を展示した歴史がありますが、医学会の会場での絵画・写真展は画期的です。

 1月末に来日したイラクのサナリアちゃんなどが描いた絵と、路上で暮らす幼い兄弟の写真などが展示されました。カンパ要請を含めた宣伝ビラも千枚以上配布され、多くの小児科医などが見に来られていました。5月2日の朝日新聞石川版に写真入りの結構大きな記事になり、この企画の責任者である高松勇医師の「日本だけでなく、世界の子どもが健全で安心して成長していけるように、小児科医も学術的な面以外にも関心を持つことが必要。今、一番困難を抱えるイラクの子どもたちのことを考える機会になれば」との談話が載りました。

 飛び入りでしたが、イラクから研修にこられている医師がイラクの医療の現状をパネル前で発表しました。数十人の方が立ったままで学会発表以上に熱心に聞いていました。治安の悪化と通勤困難などによるナース不足、医療物資の不足、栄養不足の増加、感染症での死亡率の増加、ワクチン接種の遅れ、小児ガン発生率の増加などの報告でした。余談ですが、その後の懇親会での話では、医師の誘拐が相次いでいるが小児科医は貧乏なのであまり誘拐されないそうです。彼に「サナリアのメッセージ」という会場で流したDVDをプレゼントしました。

 なお、学会場の近くで、インフルエンザに関して、医薬ビジランスセンターの浜六郎氏と医療問題研究会の山本英彦氏の講演を受けて、自由に討論する集会も開かれました。日本小児科学会主催の会場では、タミフル礼賛など製薬会社の提灯もち的発表が多々ありましたが、これらの発表者は浜六郎氏参加の集会を意識して少々堅くなっていたように思えました。今後も、発表者の方々に科学的批判者の存在を大いに意識していただき、学会を効かない薬などの宣伝の場にできない雰囲気を作っていきたいと思います。

(筆者は、小児科医)

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