2006年06月16日発行939号

【939主張 グローバル資本の警察国家作り / 共謀罪法案は廃案に】

修正ではなく廃案に

 国会会期末まで3週間の5月26日、自民・公明両党は憲法改悪の国民投票手続き法案を衆議院に提出した。憲法公布後、初めてのことだ。公教育破壊と愛国心強要を進める教育基本法改悪論議も進められている。このような中で、共謀罪を新設する組織的犯罪処罰法等改正法の成立に向けて与党と民主党は実務者会議で修正論議を進めている。

 共謀罪は、人の内心や思想を処罰する新たな治安立法だ。600種類以上の犯罪を対象に、共謀した(話し合った)内容が4年以上の刑にあたるとき、犯罪行為が行われるか否かにかかわらず合意した全員が処罰されるというものだ。今の刑法では犯罪が起こらなければ捜査はできないが、共謀罪の新設で、警察が市民社会を監視し、警察の勝手な判断で捜査ができるようになる。「共謀」を立証するために、盗聴やスパイの潜入、インターネットの通信履歴の開示などあらゆる団体を監視下に置く。どう修正しても認められるものではない。

グローバル資本の要請

 朝日新聞は4月28日の社説で「共謀罪の必要性を認めた上で、…対象を絞って出し直せ」と民主党案支持を明らかにした。2000年国際組織犯罪防止条約の批准に伴う国内法整備の一環だからというのがその理由だ。しかし、国際組織犯罪防止条約は、単に国際マフィアを取り締まるためのものではない。90年代以降、急速に広がってきた反戦反グローバリズムの闘い(世界貿易機関・国際通貨基金の進める新自由主義政策反対の闘い、イラク反戦闘争など)を抑え込むために、グローバル資本が進めたものである。

 民主党や朝日新聞がいうように共謀罪の対象をたとえ越境組織犯罪に限定しても、市民運動やNGOは取り締まりの対象になる。イラク反戦や環境保護などあらゆる運動はグローバル資本の権益を脅かしかねないからだ。日本の警備警察はすでに予防弾圧を始めている。立川テント村ビラ弾圧事件がその代表例だ。自衛隊官舎へのイラク反戦のビラ配布に住居侵入罪を適用し75日間も拘留するという、「表現の自由」への異常な弾圧を行っている。共謀罪新設はこの延長線上にある。

国際連帯で反撃

 国民投票手続き法案や教育基本法改悪案、共謀罪を審議している今通常国会は、戦争国家の道を急ぐ政府の姿を浮き彫りにしている。

 5月の在日米軍再編最終合意での「新たな段階」とは、いつでもどこにでも派兵するために米軍と自衛隊の一体化を進めることだ。国民保護計画策定は都道府県段階から市町村段階に移り、地域の戦時体制づくりが進められている。警察庁は自警団、防犯ボランティアの組織化を進め、全国で2万団体が活動している。共謀罪はこれらの動きを後押しするものだ。

 だが、このような人権無視・民主主義否定の戦争国家、警察国家への動きがそのまま進むわけはない。共謀罪は反対世論の広がりの前に、衆院での委員会強行採決はできなかった。他の諸法案も会期内成立のめどはたっていない。イラクからの全占領軍撤退、イラク自由会議支援、無防備運動と結び、国際連帯活動を弾圧する共謀罪新設法案を廃案に追い込もう。(5月27日)

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