ロゴ:国際法を市民の手に 前田朗 2006年06月16日発行939号

第92回『イラク世界民衆法廷(12)』

 2004年10月11日、イラク世界民衆法廷広島公聴会は2つの声明を採択した。

 1つは「イラク世界民衆法廷(WTI)広島公聴会声明」、もう1つは「[劣化]ウラン兵器禁止を求める緊急ヒロシマ・アピール」である。

 「イラク世界民衆法廷広島公聴会声明」は、次のように始まる。

 「ヒロシマ・ナガサキの原爆投下から59年が経過しました。被爆者は未だに放射線後障害によって苦しみ続けています。被爆者が訴え続けてきた核兵器廃絶と戦争のない世界の実現は遠く去りつつあります。」

 そして日本国憲法の戦争放棄の「平和憲法」に言及したうえで、イラク戦争について述べる。

 「ブッシュ大統領の『武力による平和論』がもたらした現実は、女性・子ども・老人を含む多くの罪のない人々の殺戮、大量破壊兵器や劣化ウラン兵器の使用による自然破壊と放射能汚染であり、暴力の連鎖と憎しみの増幅であります。さらに、国際社会を混乱させ、原油価格の高騰を招き、世界経済に多大な損失を与えて います。・・・米英軍のクラスター爆弾や劣化ウラン兵器使用による武力行使は、住民に無差別被害を与えるもので『国際人道法』に違反することは明白です。小泉首相と政府は米英両国のイラク戦争を支持し支援したことによって、何ら罪もないイラク民衆を殺戮する行為に加担をしています。 / 国際法上、人道法の重大な違反行為を行った責任者は、刑事処罰を免れることは出来ず、『国際刑事裁判所』によって裁かれるべきであります。 / 非人道兵器・核兵器による大量無差別殺戮という悲惨な体験に基づいて、ヒロシマ・ナガサキの市民は訴えます。 / 法による支配、秩序の回復を実現するために、国際社会は起ちあがろうではありませんか! / 米英両軍を中心とする多国籍軍は速やかに撤退し、イラクの治安回復、復興はイラク人民の自決にゆだねるべきです。自然の富と資源である石油はイラク人民の主権にゆだねるべきであります。」

 また、「[劣化]ウラン兵器禁止を求める緊急ヒロシマ・アピール」は、次のように述べる。

 「イラク戦争開始間際の2003年3月2日、広島におよそ6000人の人々が集まり、人文字メッセージ『NO WAR NO DU!(戦争にNO 劣化ウラン弾にNO!)』を作った。そして、その空撮写真を用いた意見広告(3月24日付『ニューヨークタイムズ』掲載)で訴えた。『ヒロシマはNOと言う これ以上ヒバクシャ(放射能被害者)を出すことに。ホワイトハウスは、劣化ウラン弾の放射性および毒性の影響を否定しているが、これは偽りである』と。 」

 そして世界に向かって訴える。

 「(1)ウラン兵器の使用は、国際刑事裁判所規定の『人道に対する罪』に該当する。ウラン兵器は、非人道的な大量破壊兵器であり、一刻も早く、その製造、使用、売買が全面的・明示的に禁止しなければならない。

(2)兵士のみならず、多くの市民が、とりわけ、放射線の影響を最も受けやすい子どもたちが[劣化]ウランの深刻な被害を受けていると考えられる。被害に苦しんでいる人々・子どもたちに、一刻も早く、救済と援助の手を差し伸べねばならない。

(3)アメリカやイギリスは、今日までに使用したウラン兵器の情報を全面的に開示すべきである。国際社会は、現地の専門家たちと連携しつつ、被害の実態を早急に明らかにし、対応策を立案・実施しなければならない。」

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