2006年07月14日発行944号

地域を変える無防備制定運動(10)

【地域から戦争をさせない力 / 無防備首都圏ネットがシンポ】

賛同の広がりを確認したシンポジウム(7月2日・東京)
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 首都圏で連続して取り組まれている無防備条例制定をめざす直接請求運動。戦争する国づくり・憲法改悪への危機感を反映して、各地で法定数を大きく上回る署名が寄せられた。7月2日、無防備地域宣言運動全国ネットワーク・首都圏運営委員会はシンポジウムを開き、賛同の広がりを確認した。

 この春首都圏で取り組まれたのは千葉県市川市、東京都日野市、国立市、大田区の4自治体。合計で4万1469筆を集めた。1か月という短期間に、生年月日・押印まで求められる署名にこれだけのの賛同が寄せられたのは画期的なことだ。

 署名活動の中でよく使われた言葉は、「憲法を生かす運動」「地域から戦争させない力になる」。街のあちこちで、武力によらない紛争の解決、軍事を圧力としない国際関係が真剣に話し合われた。

共産党の誤った理解

 一昨年の大阪市以来、15自治体で取り組まれ、議会で条約・国際法が議論され、住民の生命と財産を守る自治体の姿勢が問われてきた。「国が『地方公共団体は宣言を行えない』との見解だから実効性がない」

法定数を大きく上回る署名が寄せられた
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「外交・防衛に関する事務は地方公共団体の権限に属さないので、条例は地方自治法に抵触する」というこれまでの共通した首長意見は、憲法・国際法・地方自治法敵視の、根拠なき反対理由に過ぎない。

 シンポで中心的話題となったのは、日本共産党市川市議団の(平和・無防備条例をめざす市川の会の要請書に対する)回答書に見られる無防備条例制定運動への誤った理解だ。6月7日の市川市議会審議で共産党は、これまで各地でとった賛成の立場を変え初めて退席した。その理由に「戦争を前提とした取り決め」「急迫不正の攻撃に対してはあらゆる手段で抵抗することが市民に対する責任」を上げた。

 参加者は「条例で戦争への手足を縛ることになるとの声が多かった。この署名運動で反戦・護憲の運動が鈍るなんて聞いたことがない。非常に残念だ」「共産党は武力抵抗を認めていたのか。ショックだ」と語る。

犠牲抑える方途

 パネリストの一人、沓澤大三さん(MDS)は「沖縄戦でも、今日のイラクでも、武装抵抗が相手の攻撃の口実となり、多くの民間人が犠牲になった。住民が生活するところで戦闘はできない、戦場としてはならないというのが、そもそもジュネーブ条約に示される国際人道法の立場だ。『戦争を前提とした取り決め』というのは、誤った解釈で、条約は戦争違法化・戦争予防を進めている」と批判。「占領軍の虐殺と自爆テロが繰り返されるイラクで、武装闘争によらない市民レジスタンスで無防備地域と同質の運動をつくるイラク自由会議の実践がある。抵抗のために多くの民間人を巻き添えにしてよいというものではない。軍隊は住民を守らない、基地は攻撃目標とされる。無防備運動は、今のうちから、住民の生命と財産を守る地域の条件をつくる運動でもある」と述べた。

 同じく前田朗東京造形大学教授は「現代国際人道法は『戦争』という概念を過去のものとし、第1追加議定書も『武力行使』概念を用いている。国連憲章を前提に戦争を違法化する規範を示しつつ、武力行使がなされた場合でも民間人の犠牲を最小限に抑えるための方途として作られた。これを無視して『戦争を前提としている』というのは誤解だ」と指摘した。

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