2006年11月17日発行961号

米国・中国・朝鮮が6か国協議再開合意

【戦争しか頭にない安倍内閣】

安倍は北京合意を嫌悪

 10月31日、米国・中国と朝鮮民主主義人民共和国(以下「朝鮮」)は北京で会談を行い、朝鮮が6か国協議の枠組みに復帰することに合意したことを発表した。

 朝鮮の核実験で高まった朝鮮半島の緊張・対立を関係当事国間の対話を通じて解きほぐそうとする局面が生まれたのは歓迎すべきことだ。ロシアと韓国も歓迎を表明した。

 際立った違いを見せているのが安倍内閣の対応だ。

 米国・中国・朝鮮の合意を一応「歓迎」と表明してはいるものの、「時間稼ぎの道具に使われるだけではないか」(外務省関係者)など合意の意義を低める発言や、「条件はまだ分かっていないので、開催はよかった、よかったと赤飯が炊けるような話でない」(麻生外相)と悔しがる言動まで飛び出している。

 11月1日、安倍首相は「国連決議は北朝鮮の核の廃棄を求めている。それがなされなければ、国連決議による制裁が緩められることにはならない」と語った。塩崎官房長官は、日本の独自制裁を継続することを表明した。

 他方、ロシアのアレクセーエフ外務次官は、朝鮮の6か国協議への復帰が国連決議の要素の履行であるとして制裁解除を示唆している。安倍の主張は対話と外交努力で問題の解決をはかる姿勢ではない。6か国協議の枠組みをぶち壊そうとするのが本当の狙いだ。

ひたすら朝鮮を挑発

 これらの対応は安倍内閣が、事態を平和的に解決しようとする意思を最初から持っていなかったことを示している。

 日本政府は朝鮮の核実験に対し、独自制裁強化を決定し、国連安保理での制裁決議の採択に全力を挙げた。安保理決議が採択されるや、軍事行動である船舶検査(臨検)への自衛隊の出動や米軍との共同作戦などの戦争論議を前面に押し出した。安倍内閣は、朝鮮の核実験を最大限利用して日本の平和と安全への「危機」「脅威」と宣伝し、集団自衛権行使など歴代政権の憲法解釈を一気に突破しようとした。極め付きが、中川自民党政調会長、麻生外相から飛び出た核武装容認論であった。

 戦争推進の新憲法制定を自らの任務とする安倍にとって、朝鮮が核をもてあそぶ態度をとり続け、緊張状態が続くことほど好都合なことはない。

 現に朝鮮の6か国協議復帰という動きに対置する形で11月2日、突然「曽我ひとみさん拉致の北朝鮮工作員に逮捕状」報道が大々的に流された。同日、国連に日本政府が提出した朝鮮の拉致非難決議と連動したものだ。あらゆる材料を使って非難と「圧力」を繰り返すばかりで、問題解決への2国間交渉も6か国協議の再開も、安倍はまったく望んでいないのである。

日本核武装への警戒拡大

 中国、ロシア、韓国は朝鮮が6か国協議に復帰すれば制裁緩和に取り組むなどの誘引策をもって外交的接触を行ってきた。米国ですら、朝鮮が最も望んでいる「金融制裁」緩和を議題とする作業部会(事実上の米朝交渉)を6か国協議の枠組みの中でつくるという譲歩を与えた。

 こうした日本以外の関係国が相互に連絡をとりながら朝鮮との接触を行ってきた結果、急テンポで6か国協議再開合意が達成された。各国が朝鮮の核実験に危機意識を持ったからだけではない。朝鮮の無謀な行為を口実にして日本が戦争政策と核武装に公然とかじを切ろうとしていることに大きな危機感を抱いたからだ。

 警戒心を持つのは中国、韓国ばかりではない。米国のライス国務長官は「(朝鮮制裁国連決議に)臨検や海上封鎖を想像している人たちもいるようだが、それは狙いではない」と述べている。ブッシュまで「日本から出てきた、核兵器に関する立場を再検討中との発言を中国が懸念していることを知っている」「(日本や韓国などで核武装論が強まるとの米国内の見方について)極東で核武装が少なくなればなるほど、世界はより良くなる」(FOXテレビ)と語るほど、日本の好戦的動きは異常突出しているのだ。

 朝鮮半島の非核化、北東アジアの平和的共存をめざす6か国共同宣言に基づく協議の場こそが、拉致問題や戦後補償・国交樹立などの日朝間の懸案問題の解決に向けた対話の機会を提供する。安倍の妨害を許さずに、6か国協議の進展を求めていこう。

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