2006年12月08日発行964号

【地域を破壊する公立小中学校選択制 東京・荒川区でシンポジウム】

シンポジウムを開催(11月26日・東京)
写真:シンポジウムを開催(11月26日・東京)

 東京都で先行的に実施されている公立小中学校の選択制は、地域の教育を破壊する。小学校からランク付けされ、子どもや保護者が競争に駆り立てられる事態が生じている。なかでも学力テストとセットで実施されている荒川区は深刻だ。

 東京23区では現在、学校選択制度が小学校で14区、中学校では19区に広がった。荒川区でも2002年度から区立中学校で、1年後には区立小学校で導入された。区立小学校23校、中学校10校のうち4校が2年連続して定員を超え、区域外の入学希望者に対し抽選が行われる。一方で、大幅な定員割れの学校も生じている。

このように希望に差が出るのには、今年で4回目となる「学力向上のための調査」結果による学校ランク付けが大きく影響している。

 荒川区のホームページに「学習到達度調査―学校別の結果」が公表され、保護者は学校選択の際、「参考」にする。中学校は数学・英語など5科目、小学校は国語・算数など4科目について「基礎」「応用」ごとの「達成率」が学校ごとに掲載されている。区内共通の学力テストをもとにつくられたもの。さらに「学習意識調査―学校別の結果」として、「学習を進める基礎的な力」「これからの社会に対応していく力」から「学校に行くのが楽しい」「熱心に授業を受けている」まで、学校ごとに数値化される始末だ。

 このため各学校が作るホームページには「学力向上のための取り組み」が必ず掲載され、「平均をクリアした」「早急な補充が必要」など、宣伝や弁明に必死だ。「習熟度別学習、チームティーチング、教科担任制など個に応じて学習活動」など、子どもの選別が小学校から競って行われている。

拡大する教育格差

 11月26日、荒川区内で荒川の教育を問うシンポジウムが開かれた。パネラーは、学校選択制、教育バウチャー制度が教育基本法や子どもの権利条約で保障された教育の機会均等に反するもの、と批判。選択制の結果入学者ゼロの小学校が生まれた品川区、学力テストの成績結果に応じた教育予算の学校配分を打ち出した足立区など、格差拡大の実態が問題にされた。

区内の参加者からは「大人の格差社会が、ここまで子どもに持ち込まれてきたのか。小学生を持つ親としてなんとかしなければ」「区教委に制度の説明を求めるとか、教員の声を聞くとか、具体的に問題にしてほしい」などの意見が上がった。主催者を代表して高瀬幸子さんは「こんなひどい荒川区なのに日経新聞社の行政サービス調査で全国5位と評価された。それほど教育格差拡大の実態は問題にされていない。不安や不満を抱いている声を聞いているので、具体的な取り組みをともに考えていきたい」語った。

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