2006年12月08日発行964号 ロゴ:なんでも診察室

【メタボリックシンドローム】

 みなさん、お風呂上がりはビールなど飲まずに、まず胴回りを測りましょう。女性はいちばん細いところで計らず、ヘソの位置で測りましょう。男85センチ、女90センチ以上の方は要注意です。そのほか血圧の上が130以上か下が85以上、中性脂肪150以上か40以下 中性脂肪150以上かHDL40以下、空腹時血糖110以上、このいずれかの2つ以上に当てはまると日本式「メタボリックシンドローム」(以下、メタボリック)です。

 いまや、メタボリックはマスコミの花形です。健康食品はもとより、電機メーカ―飲料水メーカ―生命保険会社など、多数の企業がメタボリック対策商品を宣伝しています。それどころではありません、全国民が40歳以上になると「特定検診・特定保健指導」を受けて、メタボリックなど「生活習慣病」のチェックをされます。

 この「国策」が実現すれば、受診勧奨人数は実に40〜74歳の64%、3600万人になるそうです。受診すると、医者は「まってました」と血液検査や超音波でいろいろ調べた上に、下げなくてもいい160 / 95以下の血圧や280以下のコレステロール値を下げる薬や、糖尿「予備軍」への薬を出します。さらに、CT(コンピューター断層撮影)をつかって「内臓脂肪」を測ろうとします。なにしろ世界の3分の1のCTをもち、癌を3%も増加させるほどの世界に冠たる日本の医療被曝をさらに増やすこともなんのその。この国策により、総じて10兆円程度の医療費が増加すると推定されています。

 医療改悪案の重大な柱であるメタボリックなど「生活習慣病」対策は、高齢者医療費の切り捨てと平行してすでに市町村レベルで具体化されています。

 もちろんこれが私たちの健康を守るのなら、たとえ小泉・安倍政権の政策であっても歓迎すべきです。しかし、驚いたことにこのメタボリック対策が健康に良いという何らの科学的な証拠もないのです。日本のメタボリックの基準によると、50〜60歳代では男女ともに57%が「病気」になります。胴回りが85〜90センチ人は、国際的な肥満指数(体重 / 身長(メートル) / 身長)が25程度です。男では22から28、女では20から28の方が最も長生きすることがわかっています。ですから、最も長生きする人たちの半数以上を「病気」にし、検査やら薬で寿命を縮めることになるのです。

 以上は、10月21日の浜六郎氏など主催の「医薬ビジランスセミナー」(医療問題研究会らの共催)で科学的に証明されたことです。

 高齢者医療費を極端に削減しておいて、他方では病人を作り、製薬・医療機器産業や医療機関を潤す、官民共同の「胴回りを測って病気になろう運動」への不参加を訴えます。

    (筆者は、小児科医)

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