2007年04月20日発行982号

【自治体を変える市民が変える 07統一地方選の焦点(8) 若者の未来を自治体変革から】

 07統一地方選挙では、若者たちの雇用問題や貧困化も重要な争点のひとつである。

グローバル資本の責任

 今、20歳代の3人に2人が非正規雇用を強いられ、若年層の貧困化が深刻になっている。ひとつの仕事では生活できるだけの収入が得られず2つ、3つのバイトを掛け持ちする「ダブルワーク」「トリプルワーク」の若者たちも急増している。雇用の不安定化は、生活の貧困化と社会全体の不安定化に直結する。未来を担う若者たちに応える雇用政策は緊急の課題だ。

 若者たちの多くが非正規雇用である今日の事態は、グローバル資本によって作り出されたものだ。94年から06年までに465万人の正規雇用が減らされ、非正規雇用に置き換えられた。そのうち306万人は15歳から24歳の若年層である。企業が正規雇用への道を狭めた結果、多くの若者たちは、いくら努力しても正規雇用にたどりつけない。

 小泉・安倍政権は、このような非正規雇用の拡大を生み出した企業の責任を免罪し、その原因を若者自身の意欲や姿勢の問題にすりかえてきた。「若者雇用対策」として05年から始まった「若者自立塾」では、3か月間の合宿訓練を受けるには過去1年間の職歴がないことが条件であるにもかかわらず、入所費用の20万円〜30万円は自己負担だ。これでは、社会や政治に頼らずに自分の力で自立できる若者だけに焦点をあてた「支援策」にすぎず、圧倒的多数の若者たちは雇用政策そのものから排除されることになる。

 若者たちが働く人材派遣会社は過去最高の収益を上げている。しかし、その対極には「日雇い派遣」がある。派遣会社から携帯電話などで1日単位の仕事を紹介され低賃金で働く現代版日雇い労働だ。十分な収入のない「日雇い派遣」などの若者がマンガ喫茶やネットカフェで寝泊りする「ネットカフェ難民」の存在も社会問題化しつつある。

 安倍政権は今国会で、6か月働けば得られた雇用保険の受給資格を12か月に延長する雇用保険法の改悪を狙っている。安心して仕事を探す権利すら奪おうとしているのだ。

破壊進む地域経済

 では、地方自治体による「雇用政策」の実態はどうか。そのほとんどは、大型店舗か大企業工場の誘致による「雇用拡大」「地域経済振興」を掲げるにすぎない。三重県亀山市では、県と市が合計135億円もの補助金を支出し、シャープ工場を誘致したものの、地元採用者のほとんどは深夜変則労働や低処遇労働に従事する不安定労働者だった。千葉県茂原市では90億円の税金を投入して日立系工場を誘致したが、地元正規採用はゼロ。逆に新工場の稼動により700人の正規雇用者を減らす結果となっている。

 大企業誘致に巨額の補助金を投入するための財源は、地域の福祉予算を削って捻出されている。一方で、個人企業をふくむ中小企業は06年度中に12万社も廃業・倒産に追い込まれている。大企業誘致により、非正規雇用者を増やし、地域経済を衰退させ、地域の貧困化がすすむ悪循環が繰り返されている。不安定雇用の拡大と地域経済の破壊は、地方自治体の政策によっても引き起こされているのだ。

 若者たちは、正社員となって過労死しかねない長時間労働に従事するのか、非正規雇用に身を置き今の生活をぎりぎり維持するのか、そのどちらにしても「不安定」な労働と生活を強いられている。若者たちには、なによりも安心して将来の生活設計を描くことのできる雇用と生活を保障しなければならない。何でもよいから雇用を増やせばよいというのでは、人材派遣会社と同じだ。

若者が生活できる地域を

 いま、必要なことは、若者たちと一緒に、また、若者たち自身の要求に基づく雇用の拡大や仕事づくりを地域政策として打ち出すことである。そのためには、より身近な地方自治体こそが若者雇用政策の中心にすわるべきだ。地域福祉を充実させ、地域公共サービスを拡大し、地域産業を支援する。そういう地方自治体をめざせば、当然、地方自治体の職員を増やすことになるし、若者と一緒に将来の地域設計を描くことができる。

 若者たちが安心して働き生活できる地域社会を作るために、地方自治体を変えることからはじめなければならない。若者の未来と地方自治体の未来は一体のものなのである。  《このシリーズ終わり》

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