2007年07月27日発行995号

【原爆投下は戦争犯罪 国際民衆法廷でヒロシマ判決 「核兵器は国際法違反」を世界に発信】

 「米軍による広島・長崎両市への原爆投下は重大な『戦争犯罪』であり、かつ残虐な『人道に対する罪』である」−7月16日に開催された「原爆投下を裁く国際民衆法廷・広島」が下した判決だ。この間、日米両政府高官による「原爆投下正当化論」や「容認論」が飛び交う中で出された”ヒロシマ判決”は、核兵器は国際法違反であることを改めて世界に発信した。


 「原爆投下を裁く国際民衆法廷・広島」実行委員会が主催した同法廷は昨年7月15、16日に開廷し、最新の資料も駆使した立証を行い、米国ルーズベルト大統領やトルーマン大統領など被告15人を有罪とする判決要旨を下した。

 「判決全文を被爆者に手渡したい」との判事団の強い意向で、判決公判を7月16日に開廷することとなった。世界最初の原爆実験が行われたのが、1945年7月16日だ。実行委員会はあくまでこの7月16日にこだわった。

 判事団は3人。アメリカのレノックス・ハインズ教授、コスタリカのカルロス・ヴァルガス教授、日本からは家正治教授が加わった。

民間人が攻撃対象

 判決全文が読み上げられた。

 「被告人らが広島と長崎に核兵器を使用したことは、武力紛争に適用される国際人道法の原則および規定に照らして違法である、と判断する。両都市への原爆投下は、民間人を攻撃対象としており、民間人と軍事目標を区別できない核兵器を使用し、その結果生き残った民間人たちに不必要な苦痛をもたらした」

 「原爆投下により、即死者の他に、損傷を受けたり、放射性物質にさらされた結果に苦しめられる民間人がいることを、被告人らは知っていたし、知っているべきだった。それゆえ当法廷は、被告人らの違法な行為は『人道に対する罪』であると結論する」

 注目されたのは判決に続いた勧告だ。勧告はアメリカ政府に以下のことを求めた。

・原爆投下が国際法違反であることを公的に認める。核兵器のもたらした結果が国際法に違反することを宣言し、国立軍事史博物館にその宣言を永久に保存し公開する。

・原爆投下の犠牲者およびその親族に対し、公式に謝罪し、補償する。

・かつて核兵器を使用した唯一の国家として、このような兵器を再び使用しないことを約束する。

・核不拡散条約(NPT)第6条の義務を履行し、自国の核装備を解き、地上からすべての核兵器を破棄するためのあらゆる努力を行う。

・原爆犠牲者を出したすべての国に慰霊碑を建立する。そして原爆投下が国際法違反であることを、学校のカリキュラムの中に組み込む。

判決文が被爆者に

 3人の判事が署名した判決文が舞台中央で被爆者代表に手渡された。受け取ったのは、日本被団協代表委員の坪井直さんだ。

 「原爆投下が戦争犯罪、人道に対する罪だとはっきりと断罪した判決に感謝する。私たちは、あらゆる武力による紛争の解決を決して望まない」と坪井さんは感謝の言葉を述べた。

 判決公判開廷にあたり、実行委員会の共同代表の田中利幸教授(広島市立大学広島平和研究所)が経過と公判の意義について次のように述べた。

 「昨今、原爆投下の犯罪性の議論が少なくなっている。政治家のみならず国民の中でも希薄だ。民間人を対象にした空爆という戦争犯罪も繰り返し行われている。もう一度、原点に戻ろう、と民衆法廷をもつに至った。民衆法廷の結論に法的拘束力はないが、法的正当性はある。『原爆投下はしょうがない』との久間発言は、米国政府の一貫した公式見解を受け入れたもの。米国高官の『終わらせるために』発言は言い訳にすぎない。原爆投下の犯罪性がぼやかされてはならない。久間発言は犯罪者に加担する行為だ。根底には、日本の戦争責任に対する誤りがある。自分の犯罪性を認めず、責任を認識できないから、他者による犯罪性も認識できない。悪循環だ。痛みを自分のものにすることが必要だ」

謝罪と補償を求める

 判決公判後に記念シンポジウムが開かれた。

 広島・長崎・韓国の被爆者代表がコメントを述べ、パネリストたちが「ヒロシマ判決」をどう広め、生かしていくかについて意見を述べ合った。

 最後に「国際民衆法廷・広島」アピールが採択された。

 アピールでは、アメリカ政府に対しては「判決および勧告」の受け入れ、すべての被爆者への「公式な謝罪と補償」の実行を求めた。日本政府に対しては、日本が犯した戦争犯罪の犠牲者への「公式な謝罪と補償」の速やかな実行を求めた。そして、すべての核兵器保有国に対しては、「核兵器による威嚇および使用は、国際法に違反する犯罪である」ことを認識し、直ちに核廃絶に向けて行動することを求めた。

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