2020年01月24日 1609号

【コラム見・聞・感/台風被災者も切り捨てる冷酷福島県】

 昨年秋の台風19号による被災地では、住宅の再建どころか修復もままならず新年を迎えたところも多いと聞く。壊れて穴の空いたままの家屋に一家・一族が身を寄せ合い、新年を迎えなければならなかった姿を想像するだけで胸が締め付けられる。

 福島県でも多くの被災者たちが新たに生まれた。東日本大震災・原発事故で被害の小さかった中通りでも被害を受けた人が多く、被害額の単純比較だけならすでに大震災を上回るとの試算もある。

 こうした中、昨年11月5日の記者会見で、内堀雅雄知事が県独自の住宅被災者支援策を「講じる気はない」と答えたのには心底怒りがこみ上げた。同じように大震災の被災地であり、今回台風の被害も受けた宮城、岩手両県が独自支援策を検討しているさなかの出来事だったからだ。

 原発事故発生当時、避難を勧める人たちとの軋轢に歯を食いしばって耐え、福島に残らざるをえなかった、または残る決意で頑張ってきた県民はこれでは浮かばれない。

 こんな話もある。福島市で、生活保護受給世帯の高校生が大学進学に当たって奨学金の受給が決まった。すると、市当局は、これが「世帯収入に当たる」として生活保護費を減額するという暴挙に出たのだ。減額は生活保護費の45%にも及んだ。結局、この件は訴訟に発展し、市が敗訴して減額は取り消された。しかし、福島市は他の生活保護受給世帯に対し、同様の冷たい姿勢を続ける。

 現在の福島市長は復興庁出身だ。「自主避難者に対しては何もしないのが仕事。左翼のバカどもがうるさくて困る」とツイートした復興庁高官もいた。敗訴しても無反省、やりたい放題の「総棄民」こそ復興庁出身市長にとっての「本来業務」なのだ。

 県民の声に押された福島県は、遅まきながら台風被災者のうち住宅「半壊」者に10万円の独自支援策を決めた。だが、岩手県では山田町のような小規模自治体が「一部損壊」でも最大20万円の独自支援策を作った例がある。福島県と比べると雲泥の差だ。

 10年目の3・11がまもなく来る。お前は原発被災者だ、台風被災者だとか、区域内だ、区域外だと被災者同士で差”をあげつらう暇はない。県民が心をひとつにして、国・自治体の総棄民政策と闘うときだ。

   (水樹平和)
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