2020年02月28日 1614号

【千住フードパントリー オープン/相談できる地域の居場所/東京・足立区】

 東京・足立区千住関屋町にフードパントリーが開設された。恩恵や施しではなく、すべての人が持つ普遍的権利として「食」を地域に提供していく。運営責任者の藤平りつさん(平和と民主主義をともにつくる会・東京)に投稿してもらった。

 2月1日、千住フードパントリーが正式にオープンしました。事前予約は12月に行ったプレオープンの時とほぼ同じ9世帯から申し込みがあり、そのうち再利用は5世帯、新規は4世帯でした。当日は会場入り口に新たにのぼり旗を3本立て、終始会場案内のスタッフを配置し、万全の体制で利用者を迎えました。

わけありニンジン提供

 準備後まもなく通りがかった方から「八百屋で働いている。味は悪くないが傷があり、店頭に出せないニンジンがあるので使ってもらえないか」という問い合わせがあり、すぐに大量のニンジンを提供していただけることになりました。

 これを受け、初めてパントリーに来た利用者から「形が悪いことや賞味期限間近などの理由で廃棄されるという現実がたまらなく嫌で、求めている人たちに少しでも回してほしいと思っていました。千住フードパントリーはその願いをかなえてくださっているので、とても感謝しています。このようなシステムが今後もどんどん世の中に増えるとよいと思っています」という意見が寄せられ、使いきれなかったニンジンを全部引き取ってくださいました。

 また、12月に利用されたひとり親世帯の方がたからは「フードパントリーを利用したことで食事にかかる支出が減った」「食事をする意欲が湧き、子どもが楽しそうに食事をすることが増えた」「とても助かる。次回も利用したい」という感想が寄せられました。

 喫茶コーナーでは、先に逝かれた夫の思い出や、近所に住む高齢者に料理を届けている話をしてくださった女性もいて、高齢者にとって会話や相談ができる地域の居場所としてもフードパントリーは大切な場であると感じました。

親子カフェにも興味

 他にも何人かのおかあさんや子どもたちと歓談することができました。アンケートを記入している間、スタッフが子どもの遊び相手になってあげたことで、「ここで子どもをみてもらえるだけでとても助かります」という声が聞かれました。そこで、子どもを遊ばせながら育児や生活の困り事などを相談できる親子カフェの紹介をしたところ、ほとんどの方が興味を示し、3月1日の親子カフェに参加してみたいという反響がありました。

 ひとり親世帯は経済的に困っていても、児童扶養手当などの行政サービスは一定以上の収入があると基準によって打ち切られるために受けられない人もいます。フードパントリーはそのような世帯にも支援の手を差し伸べられます。

 千住フードパントリーの利用者は、高齢者や障がい者、ひとり親世帯、単身者などさまざまですが、要望に応じて宅配もしていて、「届けていただいて本当にありがたいです」という感謝の言葉もいただきました。これは既存のパントリーでは手の届かない方がたへの支援が可能になったということで、仲間の輪を広げられたのはとてもよかったと思います。

 このように千住フードパントリーは、地域で困っている人と人との繋(つな)がりをつくる重要な場所であることを実感し、継続していくことの必要性を再確認しました。



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