2020年03月20日 1617号

【明確になった米大統領選の構図/「サンダースではトランプに勝てない」キャンペーン/危機感募らす新自由主義勢力】

 米大統領選挙の序盤の山場、14州での予備選挙などが集中して行なわれたスーパーチューズデー(3月3日)を終え、対決構図が一層明確になってきた。民主党候補のトップに立つ民主主義的社会主義者バーニー・サンダース上院議員に対し、新自由主義勢力が結束して排除しようと動き出した。

バイデンへの集中

 民主党全国大会の代議員の4割近くが決まるスーパーチューズデー。結果は、ジョー・バイデン前副大統領が10州でトップとなった。これまでの獲得代議員数が664となり、サンダース候補の573人を上回った(3/7集計)。

 バイデンは前オバマ政権副大統領の知名度により、事前の世論調査では常にトップ、本命視されていた。だが、選挙戦に入りテレビ討論会では歯切れの悪さなど評判が悪く、アイオワ州で4位、ニューハンプシャー州5位と惨敗した。ネバダ州で2位となったものの、サンダースの得票率40・5%に対し、18・9%と圧倒された。サウスカロライナ州で初勝利し、かろうじて選挙戦にとどまることができた。

 この事態に危機感を抱いていたのは、バイデンばかりではない。このままでは、サンダースが民主党代表候補となりかねない。「穏健派」議員グループは2月27日、ペロシ下院議長に「急進左派」サンダースが大統領候補では同時に行なわれる下院選挙にも負けると懸念を伝えたという。民主党はスーパーチューズデーを前に「中道派」の一本化に動いた。

 アイオワでトップに立ったブティジェッジ前サウスベンド市長、ニューハンプシャーでサンダース、ブティジェッジに迫っていたエイミー・クロブシャー上院議員が3月3日を前に、相次いで撤退、ともにバイデンを支持した。

 そして、スーパーチューズデーから参戦した大富豪マイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長も3月4日早々にバイデン支持を表明し撤退。サンダース包囲網が作られた。

 3月5日「左派」エリザベス・ウォーレン上院議員が撤退したが、サンダース支持は表明しなかった。




資本からの攻撃

 「サンダースではトランプに勝てない」。これがサンダース降ろしの合言葉になっている。これには大手マスコミも一役買っている。米紙ワシントン・ポストは「サンダースを支援する目的でロシアが介入している」(2/21)と、米政府情報機関からの情報を垂れ流した。

 ニューヨーク・タイムズは「ロシアの最終的な狙いはトランプの再選を手助けすること」(2/21)と断定し、「サンダースでは勝てない」見方をふりまいた。スーパーチューズデーの結果には「民主党の支持者はトランプを打倒するための最も有力な候補はバイデンだと結論づけた」(3/4)と論じた。

 グローバル資本にとって早めにサンダースをつぶしておくに越したことはない。サンダースが民主党の大統領候補に選出されれば、世論は大きく動く。就任以来支持率が50%に達したことがないトランプ大統領の再選は危ぶまれるからだ。

 石油協会は、サンダースが岩盤層から石油を取り出すシェール・オイル採掘が環境破壊を引き起こしているとし、フラッキング(水圧破砕法)禁止を掲げていることに、「禁止されれば10年間で7兆ドル(約750兆円)の損失」と試算を示し、「大統領候補が提案するとは衝撃だ」(ソマーズ会長)と訴えている(産経3/4)。資本の利益を守るのが大統領の役目だというのだ。

グローバル資本との闘い

 サンダースは明確に資本との闘いであると述べている。「この選挙運動が他に類を見ないものになっているのは、われわれが大企業やウォール街の強欲、保険会社の強欲と対決しているからだ。気候変動の危機の実在を考えろと、化石燃料業界に言いたい。われわれの国や世界の未来の前に、あなたたちの目先の利益など重要ではない」。サンダースが掲げるメディカル・フォー・オール(すべての人に公的医療保険)や学生ローンの帳消し政策は、民間保険資本、金融資本にとって大きな脅威なのだ。

 サンダースは続けて訴えている。「われわれは大企業の既成勢力だけでなく、政治の既成勢力にも挑んでいる。トランプを倒すのはわれわれの選挙、われわれの運動だ。同じような古い政治ではトランプを倒せない」

 民主党幹部、「穏健・中道」を口にする議員はすべてグローバル資本、新自由主義政策の擁護者ということだ。そんな連中が仮にトランプに勝っても、貧困・格差はなくならない。

 1%の富裕層のための大統領候補なのか、それとも99%の貧困にあえぐ市民のための候補者なのか。候補者選びは6月の最終予備選まで続く。反サンダース・キャンペーンはますます強まるだろが、それを跳ね返すのは「サンダースの掲げる政策実現のために投票を」と呼びかける戸別訪問活動だ。DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)をはじめ多くの若者が、これまで投票所に出かけず声を上げられなかった「99%」の人びとに働きかけている。

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