2021年07月02日 1680号

【正当な要求に解雇通告/「自分だけの問題じゃない。あなたも当事者」/若者よ団結しよう】

 電話・通信システム会社ワツコ(本社大阪)に解雇された若者の支援など、「若者が人らしく働き続けられる社会の実現をめざすつどい」が6月13日、大阪で開かれた。集った若者たちが語る雇用の実態は、200年近くも前の話さえ思い起こさせる。「万国の労働者よ、団結せよ」―そうだ。若者よ、団結しよう。

みんな当事者

 「すべての労働者が当事者。特に若者に意識してほしい」。ワツコ争議の当事者Aさんはそう訴えた。そんな思いに至ったのは、身の回りにあまりにも理不尽な雇用実態があるからだ。

 Aさんは大学卒業後、派遣やアルバイトを重ねてきた。「意地悪な人に囲まれて」やめた経験もある。ワツコには正社員として採用されたが、「試用期間3か月」で解雇になった。会社は「態度や言葉遣いが悪い」と人格攻撃に出、挙句は「箸の使い方が悪い」とまで言った。本当は、会議中に腕をたたかれ2か月の重傷を負ったAさんが労災適用を求めたためだった。会社は「ここでは(暴力も)コミュニケーションの一部」と暴行自体を認めない。

 「ワツコではこれまでも精神的に追いつめられ、やめさせられた人がいると聞いた。これはもう自分だけの問題ではない」。Aさんは闘う決意をした。

使い捨ての背景

 労働者を育てることをせず、すぐにやめさせようとする背景には人材紹介会社の存在がある。Aさんも人材紹介会社ジェイックを通じてワツコに採用となった。ジェイックは「1か月以内で退職すれば紹介手数料の100%返金。3か月以内なら50%」を売りにする会社だった。ワツコにとって早く「見切り」をつけたほうが返金額は多い。

 こうした事情を明らかにしたのは新採から10年以上、複数の企業で人事・採用担当を経験したBさん。「若者の就労環境の悪化と人材紹介業には相関関係がある」と指摘する。20代の若者を対象とする人材会社は一人30万円〜75万円程度の手数料を設定。「リクナビ」など「一流」人材会社は200万円が相場だ。乱立する人材会社が、材料を仕入れるように「大量の若者を安く」を求める企業の要求にあわせ、「サービス」を競っている。若者は「取り替え自由」の材料扱いされているのだ。

外部ユニオンが力

 こんな雇用環境をどこから変えていけるのか。「労働組合、(地域の)ユニオンの役割は大きい」とBさんは語る。会社に労働組合はあっても経営者と一体の御用組合が多い。いま経営者が恐れるのは外部ユニオンの存在。誰でも加入できる労働組合「なかまユニオン」はそうした外部ユニオンの一つだ。実際、なかまユニオンとともに闘いに立ち上がっている若者の力強い発言が続いた。

 外食産業「なか卯」で5年以上、常用アルバイトとして働いてきたCさん。「深夜ワンオペ」(深夜の一人勤務)の改善を求めたところ、会社は「自主退職」に追い込もうと罵倒。応じないとみるや解雇通告。その後も失業手当の申請に必要な離職票を出さないなどいやがらせを続けた。なかまユニオンに加盟したCさんは、解雇撤回に向け裁判で闘っている。

 8年間介護職場で働くDさん。5年間務めた前の施設では、利用者を「金づる」としか考えない運営に改善を求めたところ、過重な仕事を押し付けられ、ドクターストップ状態で退職を余儀なくされた。今の職場でも、残業代未払いや休憩時間もない状態に職員は疲弊し、ここ数年、新人は1年以内に退職が続いている。

 「あんな酷い目にあうなら、黙っていよう」と前職の記憶がよみがえるDさん。だが同僚の「仕方がないよ」との諦めの言葉を聞き、「声をあげないと、一生苦い記憶になる」。なかまユニオンに出会い、職場で「愚痴大会」を組織。「熱い思いを胸に宿すことができた」と晴れ晴れと語った。

 他にも、上司からのハラスメントとの闘い、差別的待遇の改善、粘り強い経営者との団体交渉など若者にとってなかまユニオンの存在が大きな力となっている。

   *  *  *

 なかまユニオンの井手窪啓一委員長は「年間600件から900件の労働相談がある」と語る。ブラック企業との闘いは「自分だけの問題じゃない」と若者は気づいている。つどいの主催者、ワツコ争議を支援する会は「若者が人らしく働き続けられる社会をめざす会」と命名している。必要なのはユニオン(団結)だ。



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