2021年07月02日 1680号

【読書室/労働組合とは何か/木下武男著 岩波新書 900円(税込990円)/「本当の労働組合」をめざす】

 多くの人びとが貧しく不安な生活で苦しんでいるのに、今の労働組合に期待する声は少ない。労働組合の力は極端に弱く、経営者のやりたい放題だ。

 なぜ弱いのか。「そもそも日本の労働組合が『本当の労働組合』ではなかったことにある」と著者は言う。「本当の労働組合」とは、産業別労働組合のことだ。世界を見渡せば、産業別組合は今も働く者にとってなくてはならない存在なのだ。

 ところが日本の労働組合はほとんどが企業別組合であった。この企業別組合は年功賃金や終身雇用制とともに日本的労使関係という雇用システムの柱となり、会社人間を生み出し続けた。しかし今や、経営者のほうが過去と決別し、日本的雇用慣行を捨ててしまった。

 日本の労働組合も過去を清算し、「本当の労働組合」をめざす時だ。それは難事業だが、労働運動の再生の種をまき、育て、花を咲かせる、その歴史的挑戦の手引書となるのが本書だ。

 日本で産業別労働組合を切り開いたのが、関西の生コンクリートを運ぶ労働者の闘いだ。現在の全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部であり、組織破壊を狙った権力の大弾圧が繰り返されているのは、関生支部が産業別組合の典型的な闘いを作っているためだ。

 企業別組合ではなく新しいユニオン運動を支えるために労働相談活動に参加するボランティアがいる。個人加盟ユニオンを支援するために企業別組合の活動家が二重加盟している。

 著者は最後にこう締めくくる。「さらに多くの人びとがこの流れに合流するならば、それこそがユニオニズムの創造と、日本社会を根本的に変える大きな力になるだろう」   (K)
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