2021年07月16日 1682号

【沖縄 塩川港 辺野古新基地土砂搬出用コンベア問題 市民の粘り強い交渉で前進 不承認迫るハンスト現場に知事】

 沖縄では緊急事態宣言が7月11日まで続き、辺野古ゲート前阻止行動も中止を余儀なくされている。しかし、県民は黙っていない。6月7日から始まった沖縄平和市民連絡会の毎朝の県庁前スタンディング行動。「超ムダ使い2兆5500億円=辺野古新基地建設 直ちに中断しコロナで苦しむ国民の救済に回せ!」の横断幕を掲げ、訴えは続く。

コンベア設置不許可を

 沖縄県が本部(もとぶ)町塩川港に辺野古土砂搬出用のベルトコンベア設置を許可している問題で、本部町島ぐるみ会議は、県北部土木事務所と6月も15日、24日、29日と連続して交渉してきた。県議会にも陳情が出され、土木環境委員会で追及が続いている。



 辺野古埋め立てを加速させるために沖縄防衛局は、塩川港にベルトコンベア設置を申請。沖縄県は1年間許可しなかったが、今年4月「濁水対策が改善された」として許可した。以降、毎月の申請を許可し、事実上、公共施設の独占使用を認めてきた。辺野古新基地阻止を知事選で公約した玉城デニー県政だが、県庁幹部の前例踏襲主義により度々足を引っ張られている。

 市民が追及する点は、▽ベルトコンベア設置で特定の業者が長期間にわたって広大な港湾施設を占有している▽コンベア設置で港湾施設使用料が年額864万円も減額になり、県歳入に影響が出る▽大量の濁水が発生し岸壁部分が濁っている▽1日に千台を超えるダンプトラックの走行により騒音、振動、粉塵の拡散など周辺の環境が極めて悪化している―などだ。

 4月30日の交渉は午前1時まで続いた。6月29日の交渉で、県は市民が指摘したこれらの問題点をほぼ認め、対処したいと返答。粘り強い交渉の成果が出た。

「慰霊の日」平和宣言

 「慰霊の日」の6月23日、玉城デニー知事は平和宣言で「安全・安心で幸福が実感できる島」を目指すと誓った。沖縄全戦没者追悼式は昨年に続き、新型コロナの影響で規模を縮小した。

 菅義偉(すがよしひで)首相もビデオメッセージの参加となった。菅は、米軍北部訓練場や西普天間住宅地区の「返還実績」をあげ基地負担軽減に取り組むとしたが、辺野古新基地には言及しなかった。遺骨土砂問題に憤る県民を意識せざるを得なかった。

 一方、玉城デニー知事の宣言についても、「平和希求の表現が後退している」「地位協定見直しや辺野古新基地反対は間接的表現で具体的要求に欠ける」と厳しい指摘がされている。

 石原昌家沖縄国際大学名誉教授は「昨年は『航空機騒音、PFOS(ピーフォス)による水質汚染』等という軍事基地を巡る具体的な表現があったが、今年は『騒音、環境問題』にとどまった。土地規制法が制定され、沖縄戦体験の教訓をと言うからには、戦前の軍機保護法、要塞地帯法と重ねて触れてほしかった」と指摘した。

「背中押す」と具志堅さん

 戦没者の遺骨を含む土砂を埋め立てに使用しないよう要求する具志堅隆松(ぐしけんたかまつ)さんらのハンストは、6月23日まで糸満市の平和祈念公園内で続けられた。

 同日「慰霊の日」式典の午後、玉城知事がハンストのテントを訪れた。具志堅さんの今回のハンストは、辺野古新基地設計概要変更申請の不承認を求めている。知事は「力足らずで申し訳ないですが、自分でできることを一生懸命やっていきます」と話した。ハンスト現場に駆け付けた知事。具志堅さんは「来てくれたことは評価したいが、踏み込んだ言葉がほしかった。今は知事の背中を押したい」と語る。近日中に裁決となる、設計変更申請の不承認に期待が高まる。 (N)



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