2021年07月23日 1683号

【OPEN 平和と平等を拓く女たちの絆 / 世界の常識に逆行した最高裁判決 選択的夫婦別姓へいま法改正を】

 最高裁判所は6月22日、夫婦同姓の強制を定めた民法と戸籍法が憲法違反にはあたらないとする不当な判断を示した。

 氏名は個人の人格として尊重される人格権である。夫婦同姓を拒めば、法的に婚姻ができず、相続・税の控除・共同親権など、法律婚で保障される権利が保障されない。現在、約96%の女性が結婚で姓を変えているが、改姓したことで、仕事の上でまた社会生活を営む上で不利益を被っている女性は多く、夫婦別姓を望む声は高まっている。さまざまな調査でも、約70%が選択的夫婦別姓に賛成している。しかし、政府の第5次男女共同参画基本計画では「旧姓の通称利用の拡大」にとどまっている。

 夫婦同姓が法的に強制されるのは世界で日本だけである。国連の女性差別撤廃委員会から日本政府に対し、選択的夫婦別姓の法改正が勧告されている。外務省はこの勧告に対する報告を求める通知を2年以上も放置していた事実が明らかになった。国際的なジェンダー政策の推進の流れに背を向ける日本政府の姿勢が女性の社会進出を妨げている。

 現在の司法は選択的夫婦別姓を拒んでいるが、国会での論議を高め法改正を実現しなければならない。

 自民党内部でもようやく、制度改定の論議が始まっている。しかし自民党の中には、いまだに根強い反対論がある。「家族が同じ名字(みょうじ)が日本の伝統文化」、夫婦別姓は「家族がばらばらになる」というのが理由だ。だが、明治以降に強制された制度にすぎず「伝統文化」でもなく、夫婦同姓でも「家族の解体」は起きている。

妨害の背後に改憲策動

 自民党の中にある「家庭観」こそ、明治憲法のもとで天皇制を支えたイデオロギーであった。家族が同姓でなければならないという考えは、家父長的家制度に基づく親に対する尊敬・忠誠°ュ要から権力への絶対服従につながる憲法改悪をめざす思想なのだ。

 ジェンダー平等政策を推進する立場である丸川珠代男女共同参画大臣は、自身は旧姓を通称として使っている一方で、法律の改正にはかたくなに反対している。制度の実現を国に求める意見書を採択しないよう埼玉県議会に求める文書にまで名前を連ねていた。菅政権は「本格的な論議は衆院選が終わってからにしたい」と後ろ向きの姿勢だ。人権感覚の欠けた政府に任せることはできない。

 今回の判決で改めて浮き彫りになったのが、最高裁裁判官のジェンダー・アンバランスの問題である。長官を含め15人の裁判官中、女性は2人だけだ。

 市民団体「女性差別撤廃条約実現アクション」は、少なくとも「女性の裁判官を3割に」と要望を出している。ジェンダー平等か否かを判断すべき裁判所から改革を進めるべきだ。

(OPEN〈平和と平等を拓く女たちの絆〉山本よし子)
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