2021年07月23日 1683号

【みるよむ(592) 2021年7月10日配信 イラク平和テレビ局in Japan テロの被害を笑いものにするテレビ番組を批判する】

 イラクの商業放送テレビでは、視聴率を上げるために、ISIS(いわゆる「イスラム国」)の暴力がコメディー番組に利用されている。サナテレビは、このような文化状況を取材し、問題点を明らかにした。

 映像冒頭の場面は、コメディー番組の撮影風景だ。ISISが市民を捕らえて縛り「奴隷市場に連れて行け」と叫んだり、爆破攻撃が行われたりする。

 ISISは一時、人口150万人を超えるモスルなどを占領しイラクと隣国シリアの30万平方`にも及ぶ地域を支配した。イスラム支配の徹底の名の下に、略奪、暴行、拷問、虐殺の限りをつくした。多数のヤジディ教徒の女性を奴隷として売り飛ばした。そのISIS対策を口実に米国やNATO(北大西洋条約機構)諸国、イラン、ロシアなどが軍事介入し、爆撃を繰り返して犠牲者はいっそう増加した。ISISは支配地域をほぼ失ったが、テロや殺人事件をいまも続け、被害者は数百万人に及ぶ。

 こうした経過があるにもかかわらず、コメディー番組はISISの対市民テロと暴力を登場させた。サナテレビのレポーターは「番組が最高の視聴率を記録するため」と言う。視聴率のために「弱い者いじめをしたり、わいせつな言葉を使うようになった」のだ。

市民の抗議で中止に

 サナテレビは「こんな番組を見せられる市民は不安と精神的恐怖の最も耐え難い瞬間を経験します」と指摘し、「喜劇を通じて恐怖の悪ふざけをする番組は、社会に対して危険な暴力そのものと何の違いもありません」と批判する。日本のバラエティ番組も弱い者いじめや暴力肯定に行きつく同質の問題を抱えている。

 イラクでは、市民から番組に抗議が殺到し、放映は中止になった。金儲けのために暴力や差別を利用し煽る文化の支配に警告を発し、闘っていくことをサナテレビは訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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