2021年08月06日 1685号

【未来への責任(328) 遺骨土砂 具志堅さんハンストを共に(3)】

 ハンスト4日目(6月22日)。嵐で無茶苦茶になった周辺の展示物やテントを朝から整理する。午前、テント現地と韓国、日本本土のマスコミを結んでズームで記者会見をすることになっていた。

 米退役軍人で「ベテランズ・フォー・ピース」のダグラス・ラミスさんはテントにやってきて、「遺骨が入った土砂を基地に使うなんてグロテスクだ。信じられない。先輩の眠っている土砂を基地には使わせない!」と訴えた。韓国からは太平洋戦争犠牲者補償推進協議会のイ・ヒジャさんが発言した。「動員した日本は遺骨を家族に帰す責任がある」と繰り返した。

 沖縄戦遺族で81歳になる城間恒人さんは、父と兄妹8人を亡くし3人の兄弟の遺骨が見つかっていない。「当時、南部には踏み越えることもできない遺体がそこら中にあった。私の兄弟の骨が入っているかもしれない。土砂を基地に埋めるなんて絶対に許せない」。話を聞いて「戦没者の血と肉と骨が染み込んだ南部の土砂」という言葉のリアリティを本土の人たちに伝えていかねばと思う。

 ハンスト5日目の6月23日は、沖縄「慰霊の日」だ。摩文仁(まぶに)平和記念公園での式典に出席する玉城デニー知事にテント訪問を事前に要請していた。テント前では日本山妙法寺のお坊さんたちが最前列で混雑を防ぐため規制している。具志堅さんと遺族が待機するが、大雨で式典も延びる。ついに知事がやってきた。2人が握手する。具志堅さんは「南部土砂を基地に使うことは人道的に許されないことを設計変更申請不許可の理由に入れてほしい」と訴えた。遺族からも知事への訴えがあった。

 知事は「できることを一生懸命頑張りたい」と答えた。フラッシュがたかれると同時にあちこちから「デニーさん頑張れ!」の声、拍手が起きる。私はなんという現場にいるのだろうか。採掘問題が県民に戦争を、亡くなった家族のことを思い起こさせた。遺骨を戦争基地に投げ込むな! 血が染み込み肉が腐り骨が混ざった南部土砂を掘り返すな! 遺骨を守れ、の声が沸き起こり知事への大きな後押しとなる。今年の慰霊の日、沖縄の心は具志堅さんとともにハンストテントにあった。

 私はその後沖縄から離れた。太り気味の体はハンストで4キロ痩せて少しすっきりした。疲れもとれ、気持ちは沖縄のエネルギーで充満している。

 具志堅さんは、金沢市で南部土砂の採掘反対の議会決議が上がったことを受け、全国の地方自治体決議実現に向けて手紙を書くと言っている。

 連絡会は、韓国人遺族のDNA鑑定集団申請という東京での大きな闘いの準備を進めていく。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)

 
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