2021年08月06日 1685号

【2021ZENKO 反原発分科会 政府 東電・関電を追及 国際法と共闘で被害者救済を闘いとる】

 福島原発事故から11年目。「復興五輪」どころか原子力緊急事態宣言は継続し、原発を巡る問題は山積みだ。ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)反原発分科会では様々な分野の闘いが報告され、国・東京電力の責任、被害者救済・避難の権利を共同して闘い取る交流の場となった。

 ひだんれん幹事でかながわ訴訟原告団長の村田弘(ひろむ)さんは、全国で37件、原告総数1万3千人に上る損害賠償集団訴訟での賠償額が、原賠審(原子力損害賠償紛争審査会)中間指針をわずかに超える程度でしかないことを指摘。生業(なりわい)裁判など先行3訴訟の最高裁判決が悪しき前例とならないように「戻れる状況ではなく、避難生活として被害は継続していることを認めさせることが重要」と述べ、裁判官の現地調査、公害・被ばく運動との連携を訴えた。

 避難者で避難者住宅追い出しを許さない会代表の熊本美彌子さんは、行き場がなく国家公務員宿舎に住み続ける区域外避難者に対し福島県が実家を訪問して追い出しを図る暴挙を批判。「住宅に関する救済の法・制度がない犠牲者という意味で全体の問題だ。8月6日には福島地裁で第2回弁論。支援を」と呼びかけた。

内部被ばく問題がベース

 分科会では、低線量・内部被ばく問題と避難者の国際人権法活用が強調された。

 メイン報告は、子ども脱被ばく裁判の証言に立った研究者・河野益近さん。「福島県内路上の土壌に含まれたセシウムの98%が不溶性で、体内に取り組むことで長期間被ばくする。汚染水中のトリチウムやストロンチウムも体内に入って細胞を傷つけ、筋肉に蓄積される恐れがある」と、今も被ばくの危険が続くことを指摘した。区域内外を問わず避難を求めるのは被ばくによる健康被害への危惧が払しょくできないからだ。被ばくをテーマにした子ども脱被ばく裁判、南相馬20_シーベルト撤回訴訟の一審判決は、健康被害の可能性を避けた。低線量・内部被ばくの追及は様々な闘いのベースとなることが確認された。

 事故被害を国連人権理事会でアピールしてきた京都訴訟原告のM・SONODAさんは、避難者支援の勧告を受け入れるとしながらうその報告を続ける日本政府のダブルスタンダードを批判し「国内避難民の人権に関する国連特別報告者は日本訪問調査を希望している。訪日を実現させよう」と呼びかけた。避難者追い出し訴訟に対抗する弁護士・柳原敏夫さんは「3・11以降も原発被害に対応した法がない。しかし、国際人権法に照らせば避難者の住宅確保は義務付けられている。訴訟の重要な争点になる」と報告した。

 福井県大飯(おおい)原発3・4号機の運転停止訴訟原告の農家・石地優さんは、40年超え老朽原発再稼働の危険性を指摘し、ずさんな避難計画を批判。「215名のアンケート調査からも反対が4分の3いる」と展望を示した。関西電力前で再稼働反対行動を続ける関電前プロジェクトの安井賢二さんが「石地さんの運動に学び、地域を回って対話していきたい」と、汚染水の海洋放出、老朽原発稼働の停止を求める署名を地域で集める意義を語った。

 京都や阪神の放射能市民測定所は、食品等の出荷制限が現在の100ベクレル/sから大幅に緩和される動きを批判。「事故から10年経って、基準はむしろ厳しくしなければならないのに逆行している。緩和案の撤回を求める全国署名(8月締切)を集めよう」(神戸・安東克明さん)と訴えた。

 11月2日の東電刑事裁判の第1回控訴審へ、東電の刑事責任を追求する会・小林和博さんは「指定弁護士の控訴理由は不十分で、『高度の注意義務』を焦点化させたい」と小冊子の普及、意見書提出を呼びかけた。損害賠償先行3訴訟の最高裁判決に向け、千葉訴訟の原告と家族を支援する会・山本進さんは「第2陣の控訴審で東電は、元最高裁判事の意見書をそっくり主張して第1陣控訴審の巻き返しを図る。最高裁への公正判決100万人署名を千葉でも集めたい」と決意。

実行委の定期開催へ

 分科会は、▽課題ごとの署名集め▽「黒い雨」訴訟など他の被ばく者運動との連帯▽国連人権闘争への踏み込み▽分科会実行委員会の定期的開催▽3・11共同行動―などの方針を総意で決めた。東京会場の参加者は「反原発はテーマがいっぱい。でも同じ目的と思いでみんな頑張ってることがわかって、連帯感とやる気がわいた」と語った。



 
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