2021年08月06日 1685号

【表現の不自由展かんさい 3日間で1300人 妨害はねのけた市民らの行動】

 7月16〜18日、大阪府の施設エル・おおさかで「表現の不自由展かんさい」(主催―同実行委員会)が、さまざまな妨害をはねのけて開かれた。来場したものの鑑賞整理券が手に入らなかった人も含め、入場者1300人を大きく上回る市民が足を運び、多くのスタッフ、ボランティアが3日間の開催を支えた。

 2019年、妨害弾圧で中断された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ 表現の不自由展・その後」に出展された約30の作品を展示。新型コロナ対策もあり、50人ずつ1時間交替の整理券を求めて連日長い列となり、配付受付も早々に終了と関心の高さを示した。

 軍「慰安婦」を象徴する平和の少女像♂。には、作者キム・ソギョン、キム・ウンソンさんが像に込めた「12の象徴」―ばっさり切られたギザギザの「髪」、現世とつなぐ肩の「鳥」、不安の人生を表す地についていない「かかと」、ハルモニ(おばあさん)になった「影」など―が記され、鑑賞者が見入る。空けられた隣の椅子に座り、思いを馳せる人びとも続いた。

 実行委員会の中心となった一人、おかだだいさんは「3日間やれたことは奇跡≠フよう。本当はそれが当たり前なのですが」と、最後まで開催できた意義を強調する。

裁判所も憲法守る判断

 開催直前の6月25日、突然施設側が会場使用許可取り消し。府条例の条項をたてに「管理上支障」としたが、抗議電話・メール等70件、街宣3件が「安全確保が困難」の根拠のすべてだ。吉村大阪府知事が「取り消しは正当」と繰り返したように、維新府政の動きがあることは誰もが指摘する。

 実行委は大阪地裁に執行停止を申し立てた。7月9日地裁、15日大阪高裁が、適切な警備体制をとっているにもかかわらず「実力阻止のおそれで利用拒否するのは憲法に反する」と判断し、16日最高裁も府側の特別抗告を退けた。

 当日は、ヘイトスピーチや右翼街宣車の執拗な妨害に対し、多くの不自由展支援者や市民が「嫌がらせをやめろ」「奴らを通すな」と圧倒。爆竹が送りつけられた時もX線検査などを行うなど万全の対応をとり、開催は続行された。

 おかださんは「(レイシスト集団を許さない)カウンター≠フ人びとや労働組合、呼びかけに応えた市民、弁護士の力も大きい。スタッフ、ボランティアが何人いたかわからないほど」と語る。さまざまな市民と運動のネットワークは表現の自由を守りぬいた。



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