2021年08月13・20日 1686号

【新型コロナワクチン/厚労省審議会議事録を読む/副反応評価にダブルスタンダード】

 新型コロナワクチンの副反応疑い報告が急増している。だが、厚生労働省は現在行っている接種政策をまともに検証する気はない。菅政権が接種数稼ぎしか視野にないからだ。接種はいったん中断し、副反応のリスクを真剣に検証すべきだ。

 新型コロナウイルスワクチンは、害作用が高い可能性をはらんでいる。医療従事者の先行接種から5か月、7月時点での接種後の副反応疑い報告で、死亡者は800人に近づこうとしている。だが、菅政権はワクチン接種との因果関係を究明しようとしていない。

「評価不能」が99・5%

 厚労省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会に提出された資料では、情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないとするγ(ガンマ)評価がそのほとんどを占める。7月21日の同部会資料では、副反応疑い751例。うち評価済みは663件で、α(アルファ)(ワクチンと症状名との因果関係が否定できないもの)ゼロ件、β(ベータ)(ワクチンと症状名との因果関係が認められないもの)3件で0・5%、γが660件99・5%だ。副反応疑い例は、主治医など医療機関、ワクチン企業によって、原則、全数がPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に報告される。

 報告の基準は、ワクチン接種との因果関係を問わず全数報告となっている。だが、死亡・機能障害など重い事例については「医師が予防接種との関連性が高いと認める」との条件がついており、混乱を招いている。現に旭川赤十字病院では、3月19日に接種し、翌日死亡した病院職員をワクチンとの因果関係はないと判断。PMDAへの報告を見送った後、遺族の意向を受けて4月になって急きょ報告した。同様に報告されず埋もれてしまった事例も多数存在すると考えるべきだ。

 副反応検討部会事務局は、この報告の1件1件にPMDAが諮った「専門家」によるワクチン接種との関連性についての評価を付けて部会に提出している。同部会議事録によると「専門家」2人が関連性を評価し、評価が異なれば3人目の「専門家」が加わって多数意見を採用するとしている。

半数が評価理由なし

 この「専門家」はワクチン事業者との関係はない外部専門家、と厚労省は説明する。だが、何の分野の専門家かなどの情報は部会議事録やPMDAのWEBページからも確認できない。こうした「専門家」によるγ評価の理由は「情報不足」や「経過不明」が多く、理由未記入の事例も337件と約半分に上る。部会事務局は、そのような評価理由が不明確な資料を元に「ワクチン接種体制に直ちに影響を与えるほどの重大な懸念は認められない」との事務局原案を部会委員に承認するよう求めるのだ。

 だが、死亡例の1割は接種当日。3割が翌日までに死亡、半数が接種から4日以内に死亡している。「情報不足」やノーコメントで済ませていい事態ではない。

監視委では異論

 副反応検討部会は、厚労省が予防接種行政の計画や副反応への対応を検討するもの。「厚労行政をどう進めるか」が中心だ。

 一方で、薬害肝炎の経験から、第3者的立場で医薬品行政を監視するものとして「医薬品等行政評価・監視委員会」(以下、監視委)も設置されている。監視委では、副反応検討部会に提出されているPMDAの死亡例への評価を巡って全く別の議論がなされている。

 6月28日の第4回監視委で、委員長代理の佐藤嗣道(つぐみち)東京理科大学准教授(医薬品情報学専攻。薬剤疫学、医薬品リスク管理を研究)は「PMDAの専門家はどのようなアルゴリズム(解析手順)を用いているのか」と問うた上で、WHO(世界保健機関)のアルゴリズムを引用して次のように指摘している。

 「WHOのアルゴリズムでは、(1)基礎疾患など医薬品以外の可能性が高いという積極的な判断がされない限りポッシブル(可能性あり)(2)基礎疾患がなく薬以外にはっきりした要因が考えにくい場合にはプロバブル(ほぼ確実)、あるいはディフィニット(疑いもなく確実)だ」と述べる。その上で、WHOのアルゴリズムに従えば「薬剤疫学を専門にし、医薬品の副作用の個別症例の評価をしてきた立場からは、ほとんどの例が評価不能になっていることに相当な疑問を抱く。公表資料に基づけば、プロバブルとまでは言いにくいかもしれないが、ほとんどの例はポッシブルに見える。厚労省の見解の方が、私の専門の立場からすると相当にずれている」。

 7月7日の副反応検討部会資料では、PMDA評価で1件が因果関係を否定できないαとされていた。

 この事例では、主治医と報告医が基礎疾患と治療経過、検査データや治療薬の副作用も検討し、患者の死がその双方に起因したものではないことを明らかにした上で「発症直前に投与されたワクチンが、致死的な血小板減少を誘発しその結果くも膜下出血を引き起こした原因薬剤として、現時点では最も可能性が高いと考える」と結論づけている。佐藤委員が言うWHO解析手順に沿えば「可能性あり」か「ほぼ確実」だろう。

 だが、7月21日のPMDA資料では、主治医らの評価に触れることなく単に「高血圧で、基礎疾患も多く、他薬剤も服用している」との漠然とした理由で、前回自ら行ったαの評価を覆しγとした。その結果、αは再びゼロとなった。


監視委員会のライブ配信の一部が、Youtubeに複数アップされている。「第4回医薬品等行政評価・監視委員会」で検索すれば視聴できる。


都合よく使い分け

 WHOのアルゴリズム―基準が正確であるかはこの際、脇に置く。問題は、厚労省が評価基準を使い分けていることだ。

 命にかかわる重大な結果を招きかねないアナフィラキシーの副反応例について、厚労省は「日本アレルギー学会が出しているアナフィラキシーガイドラインが(診療現場で)広く使われていると聞いている。このため国際的に用いられているブライトン分類と呼ばれている基準を踏まえて評価している」とする(3/15第3回監視委)。

新たな薬害事件にも

 この「国際基準を踏まえた評価」で、副反応疑いとして報告された181例のアナフィラキシーは、47例に減った(3/26部会資料)。

 ところが、死亡例の検討は、WHO基準ではなく、PMDAが個々の症例に応じて「専門家」に依頼して判断している。99・5%が「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できない」とされた。国の責任で検証すべき副反応疑い例を認めないために「国内基準」と「国際基準」を使い分けているのだ。

 厚労省は、100万回接種あたり副反応疑い死亡例が16・2件と推計する(6/28第4回監視委)。単純計算でも1億人接種で3240件となる。害作用を少なく見せたい厚労省の姿勢を考えると、この数字よりはるかに多くの人がワクチン接種で死亡する可能性がある。

 コロナワクチン接種をいったん中断し、死亡例等の原因分析、情報開示に取り組み、接種による死亡・重篤化を避けるための医療体制を整えるべきだ。
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