2021年08月13・20日 1686号

【ミリタリー・ウォッチング 自衛隊員募集への個人情報提供 中止への取り組みで自治守れ】

 昨年1月、本コラムで、「自衛隊募集へ自治体協力が加速」している実態を示し「市民が声を上げ押し戻そう」と訴えた。加速の実態として政令市の「協力」を焦点に、「2020年度前後に大阪市、京都市、川崎市、熊本市、神戸市などで『適齢者情報』を紙媒体や電子媒体で一括提供方針。京都市は、20年度に18歳と22歳になる市民約2万8千人分の宛名シールを作成し、自衛隊に提供するという至れり尽くせりのサービスを打ち出した」と報告した。

法的手続きも無視

 一昨年、維新市長が誕生した堺市では昨年6月、宛名シールを作成し自衛隊に提供。今年もすでに6月17日に宛名シールを提供していたことがわかった。

 2年前までは、自衛隊が市民課に適齢者情報の閲覧申請し、閲覧を認める形で市民課内の端末にアップされた一覧情報を一つひとつ手書きで写し取らせるというものだった。ところが、「一括提供」は、市民課への閲覧申請はせず、市民課からの庁内情報提供を受けた総務課が宛名シールに加工し、自衛隊に提供するというやり方である。ここには住民基本情報の担当課である市民課と自衛隊の申請等のやり取りは存在しない。現場の法的手続きを無視した市長の政治決定が優先される構図となっている。

 多くの自治体の「個人情報保護条例」は、本人の承諾なしに他の団体や機関への個人情報の無条件提供を許していないはずだ。京都市では、住民運動の取り組みが「個人情報提供中止」を求める権利があることを認めさせている。本人が「個人情報提供中止申請書」を提出すれば「一括提供」から除くというものだ。

 堺市でも形だけ「個人情報提供中止申請書」を作っているが、そんな「申請書」があることを極力知られないようにしているとしか思えないひどい実態だ。「申請書」の市民への周知は全くなし。ホームページからのダウンロードもできない。各区役所でも手に入れられない。市役所本庁の総務課窓口に本人が行かなければ「申請書」すら手に入らず、提出できない。

自己情報をめぐる攻防

 今、「デジタル監視法」や「重要土地規制法」の強行制定とあいまって、自治体の個人情報保護条例の基本精神である自己情報コントロール権などを奪う自治破壊の動きが強まっている。自衛隊員募集をめぐる「個人情報提供中止」要求は、自衛隊との関係に止まらない重要な課題である。

 市民に、とくに当事者である高校生など「適齢市民」に「提供中止」の権利を知らせ、訴えかけることも模索したい。現場で対決する取り組みが重要だ。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会  
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