2021年08月27日 1687号

【避難者追い出し裁判第2回弁論 究極の人権侵害だ 避難当事者「個人の問題ではない」 福島地裁】

 福島地方裁判所で8月6日、避難者追い出し訴訟第2回口頭弁論が開かれた。福島駅前で“避難者をいじめるな”“住宅提供を行え”と人権侵害を訴え。「県はそんなひどいことをやっているのか」と声が返った。

 地裁前に約20人が集まった。ひだんれん(福島原発事故被害者団体連絡会)の大河原さき事務局長は「昨日も住宅問題で福島県と交渉。生活困難な避難者を追い出すとは人道的にも許されない」。避難の協同センターの松本徳子共同代表は「原発被害は災害救助法では救われない。その上、県が被害者の県民を訴えるとは許せない」と呼びかける。

 法廷では、大口昭彦弁護団長が冒頭「東京地裁への移送を認めず、緊急事態宣言下の裁判強行で、被告(避難当事者)の声が反映されにくくなる」と抗議。「十分な審理と慎重な判断のために単独(裁判官1人)ではなく合議審理(3人)が必要」と申請したが、裁判長は「合議審理は考えていない」と突っぱねた。

 大口弁護士は「県が(所有者の)国に代わって明け渡しを請求する権限はない。国は現時点でも避難者に明け渡し請求の意思を示していない。却下を求める」、柳原敏夫弁護士は「未曽有の過酷事故が起きたのに、古い法・制度での対応では現実に追いついていない。国際法が生かされなければならない」と訴えた。

 裁判長は次回、県側には反論、避難者側には立証計画提出を求めた。「始まったばかりで計画を出せとは、早期に幕引きしたい姿勢の表れだ」(大口弁護士)

追い出しは棄民の典型

 報告集会には約30人が参加。主催した「避難者の住宅追い出しを許さない会」熊本美彌子世話人代表は、昨年2月10日の福島県と財務省との会議メモから「県は国に使用許可延長申請を提出し許可されている一方で提訴した」と矛盾をつき、「裁判証言や財務省交渉で追及したい」。大口弁護士は「コロナ対策も原発も同様で、棄民の典型がこの住宅追い出しだ。決して小さな事件ではなく、地方の裁判所でひっそりと弁護士のやり取りで終わらせる裁判にしてはならない」と、支援の拡大を訴えた。

 参加した避難当事者は「不安だったが激励され、メディアも注目してくれ“ひとり個人の問題ではない”と実感した」と語る。職場のコロナ感染発生で参加できなかった当事者は音声メッセージで「東京は1日で感染者が5千人を超える事態なのに、福島まで来いと言うのはおかしい。今の職場は3つ目。住居から通える、ようやく安定した職場を見つけたのに、家賃のより安い遠方に引っ越せば、また一から職場を探すことになる」と事情を話した。

 参加者の発言が続く。

 山形住宅追い出し訴訟・武田徹避難者代表は「カンパは、裁判傍聴は? 私たちが何をすればよいのか見えてこない」と事務局に要望。子ども脱被ばく裁判原告団長の今野寿美雄さんは、最近浪江町の実家を解体した。「これで帰る家もなくなった。先日の津島判決は、国の責任を認めた点ではよかったが、ふるさとは喪失し不満が残る」と話した。

 かながわ訴訟原告団長の村田弘(ひろむ)さんは「何も罪もない被災者が強制的に追い出されるのは究極の人権侵害だ。これを守れないようでは、加害者に事故の反省をさせることができない。この裁判を勝ちぬいて、原発被害全体を見直させる突破口にしよう」と、闘いの意義を訴えた。

運動広げ次回10・8へ

 家賃2倍請求・追い出しの攻撃を受ける埼玉の国家公務員宿舎入居者は「福島の今は、基準超え食品もあり原発から毎日新たな放射能汚染物。子どもを帰したくない」。福島市から都内へ避難した岡田めぐみさんは「被ばくを避け、子どもの健康を守るために避難した。黒い雨裁判判決が出され被害者と交流した。(内部)被ばくの健康影響は否定できず、判決は長崎、福島にもつながるものだ」と共同した闘いを呼びかけ、作家の渡辺一枝(いちえ)さんは「私たちは内堀県知事に殺生与奪の権利を与えているわけではない」と断じた。

 原発賠償京都訴訟原告団はメッセージを寄せ、司法での国際人権法活用の勇気をたたえ「国連特別報告者に、避難者に対する人権侵害状況を見ていただこう」と連帯表明。集会の様子はリモートで京都にもつながれた。

 最後に、許さない会の小川正明事務局長が「当事者は皆さんの励ましに触れ、自信を持ってきている。現地の応援も心強い。3者が連携し、第3回口頭弁論10月8日(午後3時)に向けて運動を広げたい」とまとめた。

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