2021年09月03日 1688号

【国連特別報告者の訪日調査を 原発避難者らが外務省に受け入れ要請】

 国内避難民の人権に関する国連特別報告者、セシリア・ヒメネス・ダマリーさんの訪日と調査を求めて、市民団体が8月16日、外務省に要請書を提出した。

 日本政府は原発事故のすべての被災者に国内避難民に関する指導原則を適用するとの国連勧告に2018年3月同意しているが、住宅の無償提供打ち切りなど実態は全く逆行だ。ダマリー特別報告者が訪日を希望している中、要請賛同にはヒューマンライツ・ナウ、ピースボートなど国際NGO4団体と全国の避難者団体、市民測定所・保養団体など83団体が名を連ねた。

 要請には、世話人の田辺保雄弁護士と4人の避難者が参加し外務省からは人権人道課課長補佐が出席。記者会見で田辺弁護士が報告した。外務省側の▽特別報告者と18年8月以降3度非公式の意見交換を実施▽国連の勧告内容には無償住宅の提供までは含まれていない▽フォローアップの実際は関係省庁(内閣府、復興庁)で対応する―などの見解が明らかにされた。

 要請した避難者の一人は「特別報告者は深刻な問題だと受け止めて訪日を希望している。原発事故・避難者の人権問題に対して他部署に丸投げするとは主体性がない」と述べた。同じく二瓶(にへい)和子さんは「住宅の打ち切りは生活の基盤を奪うもの。国連から避難者が国内避難民だと指摘されて初めて、私の人権意識が芽生えた」、村田弘(ひろむ)さんは「人権人道課なら、避難者の人権状況を他省庁任せにはできないはず。訪日を実現させ、しっかりと現状を見てもらおう」と訴えた。

 田辺弁護士は「外務省は『関係省庁に訪日調査の要請があることを伝え、国内省庁の調整が整ったら特別報告者に連絡する』と返答したが、引き続き他省庁や国会議員にも働きかけたい」と強調した。

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