2021年09月10日 1689号

【新型コロナワクチン/菅政権の「ひたすら接種」にいらだつ監視委専門家/厚労省審議会議事録から(上)】

 厚生労働省に昨年設置された「医薬品等行政評価・監視委員会」(監視委)では、菅の「ワクチン一辺倒」政策に異論が出ている。

 佐藤嗣道(さとうつぐみち)委員長代理(東京理科大学准教授、医薬品情報学専攻。薬剤疫学、医薬品リスク管理を研究)は第3回監視委(3/15)でワクチンのリスク(害)とベネフィット(利益)について「4万人規模の臨床試験結果では死亡のリスクはわからない」と主張した。「4万人規模」というのは、ファイザーワクチンの効果と害作用を検証した海外臨床試験のことだ。この規模では、10万人、100万人に接種した際の数人に起きるような害作用は検出できないという指摘だ。

 佐藤准教授は「仮に10万人に1人ワクチン死亡が起こる場合、1億人接種で1000人が死亡する。これは、(政府として)許容できるのか」と質問した。

害と利益の基準なし

 だが、厚労省側の回答は「なかなか一概に言うのは難しい。その時々の状況をしっかり精査。諸外国の状況を注視」だった。花井十伍(はないじゅうご)委員(全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人)も、薬害の歴史では「使いだすと止まらない」と、エビデンス(科学的根拠)が明確になる頃には被害が拡大しているのが歴史的経緯であり、エビデンスをもって中止するというのは実質不可能と指摘。「『どこかでちょっと立ち止まろう』という意思決定ができなければならない」と予防原則(注)の重要性を説いた。

 第4回監視委(6/28)でも佐藤委員は「厚労省資料では100万人接種あたり16・2件死亡。報告されなかった例もあると考えられ、この10倍位高い可能性も視野に入れるべき。そのような死亡リスクはベネフィットに照らして許容し得るのか」と質問した。厚労省は「(死亡例の)全数がワクチン死との議論は難しい」。

 佐藤委員の問いは何人の死亡者までならワクチン接種政策を正当とするのか≠ニ政府の政策判断を質すもの。これは何人の死亡者なら、リスクがベネフィットを上回ると評価し、ワクチン接種政策を再考するのか≠ニ問うていることを意味する。だが厚労省の回答≠ヘ回答になっておらず、これでは花井委員が指摘する「ちょっと立ち止まる」ことすらできない。

 委員から投げかけられた質問を、厚労省は3か月間まともに検討していないのだろう。厚労省を含め菅政権は、ワクチンのリスクからあえて目を背け、全人口接種≠目指すのみだ。

 政権の思惑優先で、専門家のまっとうな懸念に向き合わず、市民にリスクを負わせる。このようなワクチン政策はいったん中断すべきで、時間や費用がかかっても正しく検証・評価し、再開するには必要な医療体制を確立すべきだ。《続く》

(注)重大で回復不能な負の影響を及ぼすとする仮説がある場合、科学的に十分証明されていなくても仮説を採用・規制する考え方。
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