2021年09月10日 1689号

【みるよむ(595)2021年8月28日配信 イラク平和テレビ局in Japan 働く女性への攻撃を許すな−宗教命令に反するとウエイターらを暗殺−】

 イラクではイスラム政治勢力の支配が強まり、カフェやマッサージ、ナイトクラブで働く女性の命を危険にさらす攻撃が続いている。2021年7月、サナテレビはこの問題を取り上げて当事者の女性にもインタビューを試みた。

 イラク第2の都市バスラでイスラム政治勢力サドル派のバスラ代表が多くの聴衆を集めて演説する場面が映し出される。この神学校教授は「カフェが売春宿に変えられた」と中傷して閉鎖することを要求し、カフェで働く女性を攻撃する。

 攻撃は若者の中に麻薬と堕落が広がっているという口実で行われているが、単なる世論喚起にとどまらない。レポーターは「実際には、若い女性を暗殺する扉を開けることが狙いなのです」と指摘する。

 犠牲になったモデルとビューティーセンターの経営者がその代表的な例だ。どちらの女性も、欧米や日本ではごく普通の職業であり、どこにでもある服装だ。しかし、イスラム政治勢力はファトワ(宗教命令)に反するとして暗殺した。

 イラク人権委員会のアリ・アル・ベテーさんはこのような人権状況について、「女性を犠牲にして、問題の根源から逃げようと考えている。政府当局がきちんと監督してよく調べることをやっていないのです」と批判する。

 映像の最後は、攻撃を受けている当事者の一人であるウエイターのインタビューだ。彼女はイスラム政治勢力が自分たちの命を狙っている状況に対して「国は市民のお金を盗む泥棒と闘うどころか、子どもの生活のために働いている私と闘っている」と告発する。女性の安全を守るためにインタビューの映像は真っ暗にされている。その暗闇の中から聞こえてくる声が、イラクの働く女性の置かれた状況を象徴している。

 サナテレビは、宗教支配による分断と働く女性の現状を明らかにし、女性の人権と生活を守る闘いを進めようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

 
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