2021年09月17日 1690号

【ミリタリーウォッチング 5兆5千億円の軍事費要求/“戦争への道”でなくコロナ対策へ】

 防衛省は8月末、2022年度予算の概算要求に5兆4797億円を計上。中国に対抗しようとの思惑で昨年に続き、極めて高水準の軍事費を積み上げている。

 しかも金額を明示しない「事項要求」として、航空自衛隊のF15戦闘機の改修(スタンド・オフ・ミサイルの搭載、電子戦能力の向上)や、前年度予算で約2000億円を計上した米軍再編関係経費を組み込んでいる。年末の本予算編成の段階では、総額がさらに上昇することは間違いない。

 また、研究開発費も1000億円以上増やして3200億円と過去最大。F2戦闘機の後継機開発では機体・エンジン設計だけで1000億円だ。配備を断念した「イージス・アショア」の「代替」で導入するイージスシステム搭載艦のレーダー改修費に数十億円等々。そんな金があれば、コロナ対策に回せ、とどなりたくなるのは当然だ。

 こんな超高額な兵器を買い込む防衛省は、さぞかし「豊かな」組織かというと、そうではない。防衛省の財政は、いま正真正銘の火の車≠セ。「兵器ローン」という言葉がある。高額で納入に時間がかかる兵器の場合、複数年にわたり代金を支払う「国庫債務負担行為」と言われるもので、2年目以降に支払う代金を「後年度負担」という。実はこの後年度負担=兵器ローンがどんどん増えている。

 1998年から2012年度は後年度負担の残高が3兆円前後で推移していたが、安倍政権発足後から右肩上がりに増え続け、2019年度では予算ベースで5兆3613億円にもなっている。同年の防衛省当初予算は5兆2574億円で過去最高だったが、後年度負担の残高が年間予算を上回ることとなった。これは予算編成の基本的な考え方さえも大きく逸脱する「異常事態」に他ならない。

土地規制法強行と連動

 今回の概算要求の中身と特徴は、明らかに「戦争への道」だ。今、米インド太平洋軍は九州・沖縄から台湾・フィリピンを結ぶ「第1列島線」に沿って、対中国ミサイル網を構築する計画を進めている。その配備先として中国に近接する日本は最有力候補地である。

 米国防総省関係者は「軍事作戦上の観点から言えば、北海道から東北と九州、南西諸島まで日本全土にミサイル基地を配備したいのが本音」との発言をしている。

 この6月、強引に可決された日本の「重用土地規制法」。「稀代の悪法」と言われる代物だが、実は菅政権の慌てた立法の裏にはこのような「戦争」へのロードマップが敷かれていたのではないかと思う。

 藤田なぎ
 平和と生活をむすぶ会
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS