2021年10月08日 1693号

【MDSが各地で集会/菅は打倒された/衆院選で自公政権に終止符を/対案は民主主義的社会主義】

 9月23日から10月3日にかけ首都圏、近畿あわせて14か所でMDS(民主主義的社会主義運動)集会が開催された。共通の基調講演「衆議院選挙で自公政権を倒そう」の要旨を掲載する。(まとめは編集部)

命と暮らしを守らなかった菅政権

 菅義偉首相は9月3日、「コロナ対策に専念する」として総裁選に立候補しないことを表明した。菅はなぜやめることになったのか。新型コロナから市民の命と暮らしを守らなかったからだ。9月14日現在、全国で10万9435人の自宅療養者(自宅放置者)が存在し、8月だけでも250人が自宅などで死亡した(警察庁調べ)。

 自宅死の例を挙げる。表に示されるように、埼玉県さいたま市の男性(73)は8月8日の感染確認後、自宅療養を続けていたが、8月13日に急変。治療を受けることなく死亡した。家族は「もう二度とこんな思いをする人を出してほしくない」と語っている(8/26毎日)。このように治療を受けることのない多くの死者を出す医療崩壊≠菅は引き起こしたのである。2020年5月から21年6月の間に、新型コロナ感染症入院患者は4・2倍に増えたが病床は2倍、重症者は6・5倍になったが重症者病床は2倍にしかならなかった。



 昨年、中国武漢では2500人収容の専用病院を突貫工事で建設し5万人の医師・看護師を投入した。英国はNHS(国民保健サービス)医療機関10万床のうち3万床以上を新型コロナ感染症対応病床として確保した上で、大型イベント施設を最大4千床まで増床できる臨時病院に作り変えた。

 だが、日本政府は病床拡大方針を取らないどころか、依然として公立公的病院の統廃合に20年度84億円、21年度195億円の予算を充て推進している。厚労省迫井正深医政局長によると、この計画で看護師は5万人削減される(9/10リテラ)。

 また、無症状感染者の発見・保護・隔離から感染拡大防止への方策も取られなかった。そのために必要な「いつでもどこででもPCR検査」という市民要求に背を向け、ワクチン接種のみに走った。検査から保護・隔離するための医療態勢整備よりも、一過性の医療費増で済ませようとしたからだ。一方で政府、小池百合子東京都知事は第5波が拡大する最中、83%が中止・再延期を求める世論を押しのけ「オリ・パラ」を強行した。その挙句、菅は56%が退陣を当然とする市民の怒りに前に打倒された。

総裁候補はすべて安倍・菅継承

 ところが、市民の命と暮らしを守らず打倒された菅に肯定的評価を与える者たちがいる。グローバル資本とその手先たち=十倉雅和経団連会長、竹中平蔵パソナグループ会長、吉村洋文大阪府知事、松井一郎大阪市長・日本維新の会代表らだ。彼らは、菅政権からの最大の受益者たちだ。

 市民生活が追い詰められたコロナ禍でも、企業の内部留保は484兆円と過去最高となり、22年3月期は35%の増益が見込まれている。大企業は賃金カットの一方で、株主配当、役員報酬、内部留保を拡大。パソナはワクチン接種や看護師派遣、電通は持続化給付金支給委託に食い込み巨額の利益を上げている。電通は、21年6月中間決算で対前年同月比2・3倍、361億円もの純利益だ。維新≠ヘ菅と組んで、カジノ・万博といった大規模事業にムダ金をつぎ込んでいる。

 菅の後釜を決める自民党総裁選は9月29日投開票だ。立候補した岸田、河野、高市、野田に大きな政策の差はない。市民の命と暮らしを脅かす沖縄・辺野古新基地建設も、原発も、公的病院削減も推進する。改憲にはこぞって賛成だ。岸田は自衛隊の敵基地攻撃能力を、河野は原発再稼働を必要だとする。高市の後ろ盾は安倍前首相であり、野田のコロナ対策はワクチン・治療薬頼みで病院ではなくホテル療養と大差ない酸素ステーション充実と菅路線の延長線上だ。「モリカケ」の再調査は全員が否定。安倍・菅が退陣せざるを得なかった戦争と新自由主義路線を推進する者どもだ。世論は安倍・菅路線継承を「したほうがいい」28%、「しない方がいい」58%(9/14毎日)とダブルスコアで否定している。この民意の前でも、全候補者が継承する。いずれの候補者も政権の座に座らせてはならない。

市民と野党の共闘から根本的変革へ

 そのためには11月衆院選で自公政権を打倒しなければならない。「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」と立憲、共産、社民、れいわ4党は、9月8日、政策合意した。立憲がこれまであいまいな態度をとってきた辺野古新基地建設、原発、消費税についても合意が成立した。この政策合意に基づき、市民と野党の共闘を進め勝利しなければならない。すでに、日野市長選、東京都議選、横浜市長選などで市民と野党の共闘は大きな力を発揮している。菅に引導を渡した横浜市長選では、カジノ反対住民投票、市長リコール運動を進めた市民の運動が、市民と野党の共闘を実現し勝利した。

 共闘実現に尽力したわれわれMDSも、さらにグローバル資本主義と根本から闘う方針を提起し、衆院選を闘う。

 まずコロナ対策として医療費削減政策をやめ、病床の拡充、臨時病院の建設、医療従事者の待遇改善を行う。コロナで倒産、解雇、失業などのダメージを受けた人や企業への支援を徹底的に行う。医療制度の根本的変革として、製薬資本、医療機器資本の国有化、大病院の国有化、公営化を実現する。

 そのために軍事費、無駄な大型事業を削ってコロナ対策に財源を回す。

 東アジアに平和を作り出すために辺野古新基地建設、南西諸島への自衛隊配備、強化に反対する。ZHAP(ZENKO辺野古プロジェクト)、朝鮮半島終戦平和キャンペーン賛同署名を大きく進める。

 原発汚染水排出反対、再稼働反対、すべての原発廃炉をすすめる。福島原発事故避難者、被災者への支援を徹底して行う。

 所得税、法人への課税を強化する。消費税を廃止する。株価上昇による利益に課税するために富裕税を導入する。金融取引税を導入する。

 これらの方針はグローバル資本と鋭く対決する方針であり、民主主義的社会主義に大きく前進する政策である。DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)はメディケア・フォーオール(公的医療保険の創設)、グリーン・ニューディールを掲げ、アメリカグローバル資本と鋭く対決し、バッファロー市長選で勝利を確実にした。民主主義的社会主義に大きく前進している。

 衆院選で市民と野党の共闘により自公政権に終止符を打とう。新自由主義への根本的対案である民主主義的社会主義に進もう。

(2021年9月17日)
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