2021年10月08日 1693号

【コロナ便乗の長時間労働 まん延する100時間残業 生きるための労働時間規制を】

 コロナ禍に便乗し、様々な分野で長時間労働が当然のように強いられている。労働時間規制の解体を許してはならない。

 新型コロナ対策を担当する公務員は一つの象徴だ。

 厚生労働省によると、4月に「過労死ライン」とされる月80時間を超える残業をした職員は約830人に上った。本省勤務の約5分の1に当たり、中には226時間残業した職員もいた。

職員削減の犠牲

 地方自治体の保健所職員も同様だ。京都市で2020年度、残業時間が年間1千時間を超えた職員は38人。保健所職員と事業者支援関連のコロナ対策職員だった。最も多い職員は2千時間近くに達し、月平均でも166時間となっていた。

 大阪市保健所では、4月の時間外労働(残業)が80時間を超えていたのが43人。2人は200時間を超え、最長は210時間だった。

 福岡県内の各保健所で新型コロナ担当の職員計270人の約3割で5月の残業時間が100時間以上。最長は246時間に達した。

 全国の地方自治体で過労死水準を大きく超える長時間労働がまん延している。

 その根本原因は、各地で進行した福祉、公衆衛生、医療、教育など住民サービスを担う職員削減の強行だ。公衆衛生の第一線機関である保健所も例外ではなかった。地域で住民の健康権を守る役割を担ってきた保健所の再編が、政府・厚労省主導で進められた結果だ。

 公務員には残業時間規制法がなかったが、2019年2月、人事院規則15―14(職員の勤務時間、休日及び休暇)として同年4月から施行された。超過勤務命令(時間外労働)の上限時間を、1か月について45時間かつ1年360時間までと規程を改定。予算、議会対応など業務の遂行を自ら決定できない「他律的業務」の比重の高い職員も、1か月について100時間未満かつ1年間720時間までという明確な上限が設けられ、各自治体もこれに準じて規則を改定した。

 月100時間を超える違法、非人間的残業を許してはならない。拒否することで問題を明確にし政策の誤りを正さなければならない。


長時間生むテレワーク

 コロナ禍でテレワークが拡大している。昨年8月、「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」で厚労省は「テレワークを巡る現状について」という調査結果を報告した。

 それによると「2020年の4月以降のテレワークの際に、通常の勤務よりも長時間労働になることが『あった』と回答した者が51・5%。また、テレワークで残業代支払いの対象となる時間外・休日労働を行うことがあった者のうち、残業したにもかかわらず申告していないことが『あった』と回答した者が65・1%、残業したにもかかわらず勤務先に認められないことが『あった』と回答した者が56・4%いる」。厚労省は、こうしたテレワークの長時間労働・サービス残業の弊害を百も承知で、「事業場外見なし労働規定」などガイドラインを作って企業にテレワークを推奨しているのだ。

高プロも過労死水準超え

 高度な専門知識の名目で労働時間規制を取り払った「高度プロフェッショナル制度」導入(2019年4月)から2年が過ぎたのを機に、適用者の労働時間や休日などに関して労働基準監督署に定期報告をした事業場について集計結果が出た。今年3月末時点で「高プロ」を導入しているのは20社の計21事業場で、適用者は552人だ。

 労働時間が最長の対象社員を調べたところ、6事業場で月300時間以上400時間未満、残る11事業場で月200時間以上300時間未満。計17事業場で月200時間以上の社員がいた。労働時間が月300時間の場合、週休2日とすれば1日平均で14時間勤務、月126時間の「残業時間」となる。まさに過労死水準をはるかに超える実態が浮かび上がっている。

 政府はさらに、長時間労働の温床となる裁量労働制を拡大し、法人相手の営業職に拡大を狙っている。

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 労働者を1日24時間働かせようとするのが資本主義だ。これと闘い、労働時間を制限し、人間らしい当たり前の暮らしを取り戻さなければならない。
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