2021年10月08日 1693号

【未来への責任(332) みんなの思いが政府交渉現場を作る】

 南部土砂採掘反対!遺族の声を聞け! 科学を独占するな!

 9月14日は沖縄県南部土砂採掘反対と10月太平洋地域の遺族のDNA鑑定受付を前にした厚生労働省・外務省・防衛省との意見交換会。そして冒頭の1時間余りの安定同位体比検査学習会では防衛医大の染田先生を招く。

 安定同位体比検査の学習会はタラワ島で始まった日米韓の遺骨共同鑑定の成果をさらに進めるため必要。また、フィリピン・ロシアなどで日本が行ってきた現地の人の遺骨を日本兵だと持って帰る犯罪行為が起きたが、これを解決するために絶対に必要な科学技術である。厚労省はこの検査の進行を実用段階でない、と国会議員に説明した。それは事実ではない。私たちの闘いは、議員やマスコミを統制する厚労省による科学的知見の独占を打ち破ることによって常に前進してきた。学習会で、遺骨を国別に返すことが可能であることが共有できたのは成果だ。厚労省はタラワ島の遺骨の安定同位体比検査を行うことを認めた。

 コロナ禍で厚労省・外務省が緊急事態宣言中は参加しない、と言うのをズームで参加させるところに持ち込んだ。準備は大変になるが、逆に韓国の遺族、日本の各地の遺族にも参加してもらう場所が確保できる。韓国・愛知・京都・福岡の遺族にズーム参加をお願いした。日本の遺族は高齢でリモート操作に不慣れな方が多く、前日に遺族にマイクを買いに行ってもらうなどあわただしい準備を行った。奇跡的に何の問題もなく実現できたのは、厚労省に訴えたいとの遺族の強い思いからだったと思う。

 当日の遺族の訴えは圧巻だった。韓国から6人の遺族がカメラ前に並ぶ。「日本により家族が壊された」と被害の姿を象徴的に語るイ・ヒジャさん。日本の遺族からは海没船の遺族の思いやクエゼリンの軍事基地内で遺骨が施設の下に埋められているのに放置されていることなどが訴えられた。

 前日、盛りだくさんの意見交換会の進行の打ち合わせをしようと具志堅さんに電話した。今から土を取りに行くという。きっと会場で何かするのだと思い、打ち合わせは断念。「気にせず取りに行ってください」と逆にお願いした。それが当日、45人のマスコミから注目されることになる。「遺骨を取り出して」と記者が頼む。具志堅さんは土の中から慎重にいくつかの遺骨のかけらを取り出す。「血が染み込み肉が腐り遺骨が混じる土砂」を私たちは目の前で見た。政府は「遺骨は業者に注意して取ってもらう」と言うが、そんなことはできないとはっきりした。

 ユーチューブでご覧ください。「沖縄戦・太平洋地域遺骨問題 9・14院内集会」で検索を。

(「戦没者遺骨を家族の元へ」連絡会 上田慶司)

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