2021年10月15日 1694号

【沖縄 南西諸島軍事化加速を許さない/自公政権は退場 国内外の市民の闘いで】

 岸田文雄自民党新総裁選出から2日後の10月1日、沖縄防衛局は名護市辺野古の新基地建設と埋め立てを加速させるための美謝(みじゃ)川水路切り替え工事を沖縄県の反対を押し切り開始した。民意を無視し命を脅かす安倍・菅政権の基地建設強行―南西諸島軍事化の継承を断じて許してはならない。ただちにノーの声を広げよう。

政府は強権発動を加速

 防衛省・自衛隊は、2022年度予算概算要求で、沖縄県・石垣駐屯地整備費として110億1千万円を計上した。基地を新設し570人の兵士を駐屯させる。22年度中に開設するという。同時に鹿児島県の南から台湾へと連なる南西諸島へ兵士・兵器を輸送する輸送艦2隻も新造する。102億円を充てる。

 一方、沖縄島では、辺野古新基地関連経費等に加えて、新たにうるま市勝連分屯地に地対艦ミサイルを配備する。すでに配備済みの奄美大島と宮古島、22年配備予定の石垣島と合わせ、4基地を統括する連隊本部を置く。射程の長いスタンドオフミサイルも開発中だ。

 これらは、グローバル資本主義諸国による対中軍事包囲網―日米豪印のクアッドの最前線として、南西諸島に張り巡らしたミサイル網で中国の海洋進出を封じるためだ。

 宮古島・保良(ぼら)訓練場前で座り込み抗議行動を続ける「ミサイル・弾薬庫反対住民の会」下地博盛共同代表は、退陣を表明した菅政権について「コロナ対策より五輪、党内権力争いに執心しているように見えた。できることをやらない政権だ。自衛隊配備問題もそうだが、国民の立場に立って考えない姿勢は変わらなかった。島の住民のことなど頭の片隅にもなかったのでは」と一刀両断した。

 この指摘を裏付ける出来事がコロナ禍の最中にあった。宮古島市長は8月26日、新型コロナ感染症の緊急事態宣言下での宮古島ミサイル・弾薬搬入のための港湾使用を不許可とした。当然だ。同市は、感染防止のため観光や仕事も含めて島外からの来訪の中止を強く求めていた。だが防衛局は「輸送に関わるPCR検査やワクチン接種等のコロナ対策の徹底」と口にするだけで輸送強行の姿勢を見せた。第5波のさなかでのごり押しは、市民の命よりも軍事優先を認めよと言うに等しい。市長も「対策云々ではない。この状況での搬入は市民感情として受け入れがたい」とする。

サンゴ破壊し護岸工事

 宮古・八重山諸島への地対艦ミサイル配備と併せて、政府は名護市辺野古新基地建設の工事強行姿勢を頑なに変えていない。

 8月27日、沖縄防衛局は、大浦湾に新たな護岸となる「N2」建設工事開始を発表した。250mに渡るこの護岸は、土砂の陸揚げに利用するものだが、昨年4月提出の埋め立て申請設計変更にも記載されておらず、県は公有水面埋立法に反する疑いを指摘している。「マヨネーズ状」とも言われる軟弱地盤にも近い。

 防衛局は近辺のサンゴ移植が終了したとして埋め立てを開始したが、サンゴを破砕し有害物質を含む接着剤で移植先に固定するという形ばかりのもの。生活よりも環境よりも軍事だ。日本自然保護協会(NACS―J)の安部真理子主任は、N2護岸について「大浦湾の入り口をふさぎ、海流を大きく変えてしまうのではないか。生態系への致命的なダメージになりかねない」との懸念を述べている。


反対運動は止まらない

 コロナ禍で「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」は辺野古現地の組織的な阻止行動を控えていたが、市民の自発的な監視行動や土砂搬出地域での行動は続いていた。同会議は、新型コロナ感染症のため現地行動は当面控えるが10月2日、第1土曜日のオンライン集会形式での新たな運動「ブルーアクション」をスタートさせた。連動して「『止めよう!辺野古埋立て』国会包囲実行委員会」は玉城デニー知事による設計変更申請不承認を後押しするため、不承認申請発表翌日の首相官邸前行動を皮切りに、1週間連続でブルーを身に着けた「辺野古ブルーアクション」など多彩な行動を準備している。

政府包囲する国際連帯

 また、国内外のさまざまな連帯運動が進んでいる。

 9月11日、沖縄県主催で「辺野古・大浦湾シンポジウム」が開かれた。19年9月、辺野古・大浦湾が110ある「ホープスポット」(希望の海)に国内で初めて選ばれたことが焦点の一つだ。ホープスポットとは世界的海洋生物学者シルビア・アール博士が設立したNGO「ミッション・ブルー」が世界で最も重要な海域として登録するもの。アール博士はビデオメッセージで「生態系を守ることが究極の安全保障だ」と強調し、SDCC(ジュゴン保護キャンペーンセンター)は辺野古新基地建設を「環境問題、基地・平和問題であり民主主義の問題」「軟弱地盤の問題を県が米政府にきちんと伝えるべき」と訴え、玉城知事も情報提供を約束した(9/28SDCCニュース)。

 埋め立てに沖縄戦戦没者の遺骨を含む土砂を使用することに反対する自治体意見書は、沖縄県内にとどまらず、県外でもすでに40を超える自治体で採択された。

 米国反戦NPO「ワールド・ビヨンド・ウォー」は玉城知事がバイデン米大統領にあてた辺野古新基地建設取りやめを求める書簡への賛同署名を8月に開始しひと月弱で8000人分を集めた。ジョセフ・エサティエ日本支部長は「県民投票で70%が反対の民意を示し、圧政に抵抗している。まさに民主主義が沖縄では生きている」と語る(9/2しんぶん赤旗)。

 ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)が呼びかける、DSA(米民主主義的社会主義者)とともに新基地建設反対を米バイデン政権に要求するZHAP(ZENKO辺野古プロジェクト)への賛同者数も9月26日時点で4000人を超えた。

 辺野古新基地建設は、地球環境保護、人道、民主主義問題として、反基地・平和運動の分野にとどまらない深みと国際的な広がりを見せている。

自民党では変わらない

 軟弱地盤、かさみ続ける経費など技術的・財政的な壁だけでなく、国内外の広範な民意が日本政府を包囲している。政府はこの民意に耳をふさぎ、権力とカネに頼って強権的手段に訴えてきた。岸田首相は、菅政権の下で強権発動を続けた岸信夫防衛大臣を留任させた。新政権も同様だ。「石垣島に軍事基地を作らせない市民連絡会」の藤井幸子さんは「自民党が政権にある限り誰が総理になっても政治の方向性は変わらない」と政権交代を訴える(9/4琉球新報)。

 自公を政権の座から引きずり下ろし、南西諸島の軍事化を押しとどめよう。

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