2021年10月22日 1695号

【MDS18の政策/医療費は公費で 市民負担ゼロへ/第5回医療制度の改革―医療を商品にせず公共にとり戻す(4)】

 「18の政策」は「被保険者負担を無くす。当面、国民健康保険の立て直しと高齢者保健への公的資金大幅増で被保険者負担を大幅に減らす」と目標を設定する。

 日本の公的医療保険は、(1)大企業や業界団体で構成する「組合健保」(2)中小企業の「協会けんぽ」(3)公務員の「共済組合」(4)自営業者など他の保険に加入していない人の「国民健康保険」に概ね分かれる。

 財源は、(1)〜(3)は、雇用主と労働者(被保険者)が折半する保険料が中心。(4)は被保険者(住民)の保険料(18%)、国・地方税(37%)、(1)〜(3)など他の保険からの交付金(22%)が主だ。国保は無職の人(44%)と非正規雇用(34%)が8割近くを占める。平均所得は(1)〜(3)が145万〜235万円であるのに対して、国保は84万円だ。財源としての保険料は他の保険者と比べ少ないが、個々の被保険者の所得が著しく少ないため極めて割高だ。このため、保険料滞納者は全加入世帯の13・7%約245万世帯に上る(19年度)。77万世帯が滞納による資格はく奪で無保険に近い状態となっている。

皆保険制度の危機

 日本は「国民皆保険制度」と言われる。全市民が何らかの公的保険に加入し、保険証を示せば必要な医療が受けられる誰でも、どこでも平等に≠ニいう制度だ。その柱が国民健康保険だが、非正規雇用、失業者増、年金削減による保険料収入減(滞納者増も含む)で財政破綻の危機が長年続く。全国知事会は国民健康保険への1兆円の国庫負担増を求めており、この金額で財政状況は改善できるとの試算もある。国保への財政出動は待ったなしだ。

 赤字に苦しむ保険者は国保だけではない。

 組合健保は、リーマンショック後、非正規雇用の増加と保険料算定基礎となる賃金抑制のため保険料収入が減り、解散に追い込まれる組合が続出し、現在も多くの組合が赤字だ。協会けんぽも赤字が続いている。

 一方で各保険者への補助金・交付金は減額されている。しかも新型コロナ対策で保険者の医療費負担は確実に増える。PCR検査や1本(100r)6万7千円のレムデシビルも保険適用で、患者の窓口負担(医療費の1〜3割)は公費だが残りは保険者負担だ。

 日本はG7中、国営医療で効率の良い英国、極端な医療切り捨てのイタリアに次いで、3番目に医療費が少ない。安倍政権は、社会保障費増を口実に消費税を10%に引き上げたが、大企業・富裕層減税の穴埋めとして使われ、一向に社会保障費には回ってこなかった。しかも、企業の社会保障費負担は日本は少ない。

 企業・富裕層への適切な増税や保険料負担増は当然だ。「18の政策」は、国民皆保険制度の維持、小児医療実質無料化、後期高齢者医療窓口負担軽減から医療無料化をめざす。(続く)
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