2021年10月22日 1695号

【読書室/ルポ コロナ禍で追いつめられる女性たち 深まる孤立と貧困/飯島裕子著 光文社新書 800円(税込880円)/積み重なる被害の顕在化】

 私たちの生活が新型コロナ感染症の影響を受け始めて1年半あまり。著者は女性の視点からコロナ禍を振り返る。とりわけ「困難が集中するシングルマザー、ステイホームすることがままならない女性、エッセンシャルワーカー、単身女性」などの状況を追う。

 象徴的な事実の一つに女性の自殺率急増がある。雇用、家族状況、社会的孤立等が要因である。昨年9月の統計によれば、無職者が増加しており、その内訳は「年金・雇用保険等生活者」が最多だ。経済的困窮が大きく影響している。

 飲食や宿泊、流通などサービス業は非正規雇用の女性労働者で成り立っている。サービス業が新型コロナによって休業や廃業を余儀なくされ、多くの非正規労働者が仕事を失い、収入を激減させた。支援策の制度が作られたものの、非正規であるがゆえに受けられなかった人が続出した。

 テレワークが推奨されたが、非正規は対象外とされることが多かった。その現実について著者は、「テレワーク階級―新しい身分制度の誕生」とまでいう。

 家庭状況を見ると、ステイホームが強制されたため男性のストレス解消が妻や子どもに向い、家庭内暴力や虐待が増加している。被害を受けた妻や子は逃げ場を失う。社会的に孤立してしまい、最後に死を選ぶ。

 こうした現状を描いた本書は、新型コロナが明らかにしたものを3点指摘する。女性の貧困、女性活躍のウソ、仕事の分断と格差である。重要なことは、これらがずっと以前から存在しており、コロナ禍でより顕在化したという点だ。ここに根本的なメスを入れなければ、コロナ対策は実効性を持たない。    (I)
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